Noli me tangere
「僕にこんなものを見せるなんて、本当に馬鹿げていますよ……」
過去に自分が殺されかけたことや、骸が今なお彼の体を狙っていることを覚えていないはずもない。だというのに、彼は今、己の一番の弱点をあまりに無防備に骸へと晒していることになる。
ここを掻き乱されれば、彼は己の心の根底を失うも同義だというのに、彼はただでさえ異物であるはずの他人の精神を受け入れてみせた。
土台を失った心はバランスを崩し、少し負荷をかければ簡単に彼を壊すことができる。乗っ取ることもたやすいだろう。
なんて虫酸が走る甘さ!
骸はその手に三叉槍を出現させた。
やることは、既に決まっていた。
(――止めさせなければ)
作品名:Noli me tangere 作家名:加賀屋 藍(※撤退予定)