【完全読み切り】責
彼は私を半ば強引にひきはがすと、そのまま洞窟に向かう。さっきグリーンが来た方だ。
「どこへいくつもりだ」
「グリーン…、お前にも言っておかなきゃいけないことがある」
「なんだよ」
「俺は…もう死んだのだと思ってくれ」
「…はぁ?」
「俺はもう、この世にいないんだって、思ってくれ」
「何を言いやがる」
「俺は…お前にも迷惑をかけすぎた。自立してないのに、お前と同列に並んで…お前のプライドまで傷つけた」
「…何でまかせ言ってんだよ」
「…俺は…もうお前らとかかわるつもりはない」
「!おい!!待ちやがれ!」
グリーンが息を荒げて奮えながら叫ぶ。
「お前が、いて、それだけで迷惑がかかるんなら…この世界はもうとっくに崩壊してるんだよ!!!」
しかしレッドは…もう何にも返事をしなかった。追いかけるグリーンを、とっさに繰り出したポケモンたちが防ぐ。もうズタボロになっていたグリーンは、対抗できなかった。
「レッド!」
私はポケモンを繰り出して応戦する。…しかし今のレッドには敵わない。強さだけは強くなっているんだ。それも格段に。グリーンと対等な、しかも現状では疲れていない私のポケモンを、一撃でいなしてしまった。
「イエロー」
レッドは一言だけ言った。
「俺よりいい男は、この世にわんさかいると思うぜ」
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「どうやら他のやつらも行っちまったようだな」
グリーンは起きながら言う。
「あいつ…言っていることと実際が食い違いすぎだろ」
「うん…」
「あいつのポケモン、見たよな?」
そう、そこには、あのバンダナがあった。
レッドのポケモンは、みなあのバンダナをつけていた。
「本当は…本当は…違うんでしょ?もし本当に言っている通りなら…なんで私の眼を見て言えないの?」