【完全読み切り】責
シロガネ山の頂点にいるのは、ここなら普通のやつは来ないからだ。
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埒が明かない。好い加減こいつも口を開いたらどうなんだ。俺はただただ目の前のライバル…の姿をした木偶の棒を見て思う。
…イエローが泣いている。お前これを見ても何も言えないのか?
「お前なあ…そうやって黙って何が楽しいんだよ!!」
「…」
「…ずっとそうやってたいならそうしろよ」
「…」
「俺の…どこに不満なんだよ」
「…!!」
レッドがなんやら反応した。やっぱり俺に問題があるんじゃないか。だったら言ってくれよ。俺はお前のライバルである以前に親友だっただろうが。
「…お前が悪いわけじゃない」
…なんだと…俺じゃないだと?ふざけるな…俺以外のやつに絶望するということがあるのかよ…?
少なくともここで泣いてるこいつでないことは確かだろうに。しかも、今の発言だとイエローが激しくなるだろ。
見ればやっぱり、というべきか。
「…ううっ…ふうっ…ひぐぅ…」
おいおい、レッドお前そんなキャラだったかよ。昔からお前は女が苦手で飲まれるくらいだったのに。今じゃ泣かせて泣かせて泣かせまくると。いや、お前じゃないだろ?お前はそんなことするやつじゃないと信じてるぜ。
「そして、イエローのせいでもない」
…は?
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どういうことなのレッド。そりゃあグリーンは悪くないけれど、私には落ち度がいろいろあったでしょ。
私は、思わずレッドに詰め寄っていた。
なにもかも、昔のまんま。かすかな旅のにおいも、このぬくもりも、この姿もみんな何でもかんでも昔のまま。
違うのは眼。あのころは燃えてたじゃない。今はもはや死んでしまったような眼。なにもかも、絶望したような。
「それは何の気遣いなの…?」
「…別に、正直に言っているだけだ」
「嘘でしょう!?私はずっとあんなにあなたに…」
「そう思わせること、なんだよ」
「…?」
「俺が一人前じゃないから人に罪悪感を抱かせる、それが嫌なんだよ」
「…!」
私も、そしておそらくグリーンも、思考停止した。
「な、何を言い出すの急に」
「だってそうだろ?俺は今まで人に絶望しか与えてない。俺が悪いのに、俺が原因なのに…みんな俺のせいなのにさぁ…」