あなたが好きだって言ってるんですよ。
呼びかければ肩がびくっとはねて、それから恐る恐るというように振り返るその顔に、帝人は、冷静を装ってじっとタイミングを見計らい、そしてここぞというところを狙って、えいっと一気に顔を近づける。
「っ!」
息をのんだ臨也の唇に、かすめるだけのキスをして、即座にぱっと離れて。
「・・・みか、え?今っ、何、ええええ?」
混乱して唇を押さえる臨也に、ああもうだからあなたが言ったんでしょうが、とさっき言われた言葉をそのままお返し。
「キスまでしたんですから察してくださいよ!」
ああ照れる。ここで一気に照れる。ああもう。
っていうかなんでこの人両手で口を押さえてるわけ、なんでそういちいち動作可愛いの、計算なの?天然なの?ときめくんだけど!と帝人が臨也を睨めば、臨也のほうでも、ああもうなんで帝人君ってこういうときいつも上目遣いなの?計算なの?天然なの?可愛すぎるでしょばか!と思っていたりして。
まあようするにこれって、つまりはバカップル誕生の瞬間である。
「・・・顔、真っ赤だよ帝人君」
「それは・・・あなたのせいですよ」
「そ、そっか、おんなじだねえ」
「・・・です、ね」
白昼の公園で真っ赤になって向かい合った2人の、行く先はさて、何色でしょう?
作品名:あなたが好きだって言ってるんですよ。 作家名:夏野