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あなたが好きだって言ってるんですよ。

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折原臨也は、走っていた。
静雄との喧嘩中にこんな敵前逃亡をしたのは初めてだ。いつもならば適当に余裕を見せつけて颯爽とその場をさるんだけれども、今回ばかりは部が悪すぎる。だって、なんであそこにあの子がいるかなあ!
竜ヶ峰帝人というその子のことを、臨也は思い出すだけでスーパーボールみたいに心を跳ね上げてしまうわけだけど、まだこっちの心の準備ができていない。先月の終わり、臨也は怪我を負った帝人を手当てして、ついでに告白まがいのことをやらかして、さらにはキスまでしてしまったわけで。だからつまり、ようするに、恥ずかしいの!怖いの!察してよ!
うわああと頭に血が上り、顔を真っ赤にして走る様子は滑稽だっただろう。とにかく走って走って、臨也はひとまず公園に落ち着く。さてこれからどうしたものか。
見つけたと言ったからには、探していたのだろう。避けていたことなどとっくにばれていたと。まあ分かってたけど。
ああもうどうすりゃいいの!と頭を掻きむしる23歳、これが初恋であったりする。前例と知識のないことに関してまで、うまく立ち回れる自信などない。とにかく落ち着いて、落ち着くんだ。それからそう、メールならば比較的冷静にしていられるはずだから、メールを打とう。そうしよう。
はーっと息を吐いた臨也はしかし、次の瞬間文字通り飛び上がった。
「発見!」
と聞き慣れた声が飛んできたからだ。
「ぎゃあ!」
そんな馬鹿な!自分は全速力で走り去ったはずなのに!と振り返れば、公園の入口に帝人の姿が見える。片手には携帯、ああそういうこと!そういうことにはダラーズ本気でフル活用するよね君!と心中叫んだところで、彼が携帯の有効活用をしなくなることもないので。
「追っかけてくんなってばー!」
「逃げるから追いたくなるんでしょうがー!!」
くるりと踵を返す臨也だが、いくら帝人よりずっと体力があると自負していたとしても、さっきまで静雄と全力で戦っていたわけで。そしてその後全速力で逃げたわけで。
さすがに体力も無尽蔵ではない。対する帝人は途中車に乗せてもらったりもしたので、まだまだ体力満タン。勝負は帝人に軍配を上げた。
伸ばした手が、黒いコートをつかむ。
「つかまえ・・・たっ!」
ぐいっとそれを引けば、ぎゃあ!と上がる悲鳴、振り返ってたたらを踏む臨也。そして、忘れてはいけない。危ないぞ、車は急に止まれない、のだ。
「ちょっ、まっ!」
「う、わあっ!」
どすん。
帝人が、勢いのまま臨也の上に転び、それをかばおうとしたのか臨也も一緒に仰向けに地面に落ちる。
「っ・・・あ、ごめんなさ・・・!」
思い切り下敷きにしてしまったことに気づいて、帝人が慌てて上半身を起こしたが、真下で臨也は硬直していた。
あれ?と首をかしげ、そのまま見降ろし続ける帝人に、臨也はか細い声で「あの、」と声をかける。顔がみるみる赤くなっていく。うわあ人間ってこんなに一瞬で赤くなれるのか、とそんな良くわからないところに帝人が感心していると、臨也は酸欠の金魚見たいに口をぱくぱくさせてから、やっとでようやく、
「・・・どいて」
と言った。
どいて?帝人はようやく自分と臨也の体制に気づく。いくら小さな公園で人通りがなく、多分誰も見ていないだろうと推測できたとしても、地面の上に臨也を押し倒しているような今の帝人の体制は、正直、人様には決して見られたくない類のものだ。
ぎゃ!と悲鳴を上げて、飛びのこうとしたけれど、その瞬間冷静な帝人も頭の隅でいや待てよ、と思考を投げかけた。
このままどいたらこの人、もう一回逃げるんじゃないの?と。
目をぱちぱちさせてその可能性について考えていると、沈黙の間に耐えきれないとでもいうように臨也が顔を両手で覆った。だがしかしそのせいで真っ赤な耳が悪目立ちしている。何これときめく。
「み、見ないでくれます?」
「臨也さん、なんで敬語なんですか」
「恥ずかしいって言ってるんだよ!」
「言ってませんよ」
ていっと臨也の腹の上に座りなおした帝人は、それにひい!と悲鳴を上げた臨也を無視した。腹の上ならば喧嘩と間違われることがあるだろうけれども、まあ大丈夫だろうと踏んだのだ。
「人の顔見るなり意味不明のこと叫んで逃げるのって失礼じゃないですかね、臨也さん」
「それをいうなら今この体制で馬乗りの君も失礼だよね!」
「だって臨也さん逃げるじゃないですか」
「逃げないからどいてよ!ほんとどいて!もうお願い死にそう!」
悲壮な声だ。これはそろそろ本気でまずいのかもしれない。仕方がないな、と帝人は臨也の上から起き上がって、ぱんぱん、と服についた砂塵を払い、臨也に向かって手を差し出した。
「起きられます?」
「・・・帝人君のばか・・・」
こわごわと帝人の手をとって上半身を起こし、そのまま地べたに座り込んで、臨也はがっくりとうなだれた。心臓の早さが尋常じゃない。
「心臓って、一生に脈打てる数決まってるっていうじゃない」
「そうなんですか?」
「それでいうなら帝人君は俺の寿命を縮めまくってるんだよ、間接的な殺人だよ!」
「・・・へえ」
力なく言われた言葉に、帝人は思わず笑って、それから、家を出るときから言おうと決めていた言葉を口にすることにした。どんな反応が返るかとても楽しみだ。


「臨也さんって意外と可愛いですよね」


「かっ・・・!?」
会心の笑みを浮かべた帝人に、臨也はひきつった声を上げ、それから顔もついでにあげて、帝人に向かって慌てたようにたたみかける。
「可愛いわけないでしょ!?俺だよ!?折原臨也だよ!?自分で何言ったかちゃんと理解してるの!?俺は君にキスしたいとか抱きしめたいとか押し倒したいとかそんなことしか考えてないよどこが可愛いのどこがっ!」
最後のほうはノンブレスだった。なんか聞き捨てならない言葉を聞いた気がしたが、そこは勝者の余裕で流してあげるのが大人というものだ、と、高校生の癖に帝人は思案する。
っていうかこの人にもちゃんと、そういう欲が存在していたんだなあとか、またしてもピントのずれたことを思って、帝人は臨也の顔を指差した。
「しいていうなら顔真っ赤なところでしょうか」
可愛いところ、と言えば、臨也は赤い顔をさらに赤くして逆ギレした。
「それは君のせいだよ!」
「知ってます」
ああもうこれだから会いたくなかったんだ!と頭を抱える臨也は、まるでどこぞの中学生のように初々しくほほえましい。帝人は言うつもりだった「ごめんなさい」を、とりあえず心のなかでゴミ箱に捨てた。この人に言うべき言葉は、それじゃないなと、たった今理解したから。
「お返事しようと思ってるんですけど、よく考えたら僕、ちゃんとあなたに告白されてないんですよね」
そんなことをいいながら、しゃがみこんで臨也の視線に合わせたなら、思いっきり目をそらされた。でも真っ赤な耳たぶは目に入るあたりが、頭隠してなんとやら?
「キスまでしたんだから察してよ・・・」
消え入りそうな声で言われて、しょうがないなあと帝人は肩をすくめて。
「臨也さん」