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カイトとマスターの日常小話

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続 カイトとアイスと俺。








 …何をやってるんだ?コイツは…。

 一生懸命にアイスを冷凍庫に詰め込もうとしているカイトに軽い眩暈を覚える。
 床一面に転がっているのは、アイスアイスアイス…。そして、アイスの詰まったスーパーの袋が五個。その袋からアイスのカップがころりと落ち、足元に転がった。

「あ、マスター、おかえりなさい」

俺に気付いたカイトがアイスを押し込む手を止めて、俺を見上げる。…俺が帰ってくるといつもすっ飛んで来て、俺を出迎えるカイトが出てこないので、まさか居ない間に不具合でも起きて緊急停止して動けなくなったのかと思い、心配したのも束の間、この状況に言葉がない。
「マスター、アイスが入らないんです。どうしましょう?」
引き出し式の冷凍庫は山盛りのアイスのカップ。カイトが困ったようにそう言う。一体なんだって、こんなにアイスがあるんだ?
「…カイト、そのアイスはどうしたんだ?」
「買って来ました」
「買って?」
「はい。…ああ、僕、幸せすぎて死にそうです…」
アイスに囲まれ、うっとりとするカイトに俺は脱力しそうだ。
「…お前、まさか、俺が渡したお金で…?」
「はい。こんなにいっぱい買えました!!」
アイス、二万円分…有り得ない…有り得ねえ!!!二万円あったら、MEIKOを買っても、ミクを買ってもお釣りが来るぞ。
「でも、冷凍庫に入りきらなくて…どうしましょう?」
…今から、コイツを返品出来ないだろうかと、俺は本気で考えた。…が、もう既に一ヶ月一緒に過ごして、情が移ってしまっている。…ここは心を鬼にせねば!!
「…マスター?」
「二万円分もいっぺんにアイス、買ってくる奴があるか!!」
…俺は自分で言うのもなんだが、温厚な部類に入ると思うし、怒るのは苦手だ。…でも、これはちゃんと怒っておかなければ、カイトの為にならない。…初めて、俺に怒鳴られたカイトはびっくりして、目を見開き、ぽろりと涙を零した。
「…うっ…ふぅっ…」
泣き出したカイトにううっと心が揺らぐが、ここが正念場だ。俺はカイトの頭を撫でつつ、口を開いた。
「…怒鳴って悪かった。でも、カイト、良く聴け。お前に渡したお金は俺が毎日、一生懸命に働いて得たお金だ。そのお金でお前と一緒に暮らすことが出来るんだ。お金がないとお前のアイスも買えないし、服も、食べ物も買えないし、生きていくのに必要な電気もガスも水道も止められてしまう。…生きていくためには働かないといけない。それは、お金が必要だからだ」
「…ふぁい」
「お金がないとお前と一緒に暮らすことも出来なくなる」
「…そんな…の、いやれす…」
カイトは鼻を啜り、そう言った。
「俺も嫌だ」
「…ますたぁと、いっしょ…にいられなくなるなら、あいす、がまん…します…」
ぼろぼろと落ちる涙を拭い、カイトが言う。
「…我慢しろとは言ってないだろう。…これからは使い方をよく考えろと言ってるんだ。…それに、こんなにいっぱいあっても、冷凍庫に入りきらないのは見なくても解るだろう?」
「…うぇ、…ごめんなさぁい…」
「…いや、今回は何も考えずにお前にお金をやった俺も悪かった。…このアイスは取り敢えず、車庫に使ってない保存用の古い冷凍庫があるから、そこにいれよう」
すでに溶けかけたアイスの甘い匂いがキッチンに充満し、胸焼けしそうだ。…この溶けたアイスを持っていっても、スーパーでは返品を受け付けてくれないだろう。…ハハハ…いい授業料になったぜ。…涙目になるのを堪えながら、俺はぐずるカイトを手伝わせ、大量のアイスを片付けた。




「…うーん。ダッツのリッチミルク、美味しいですVv」
ふにゃんと顔を綻ばせるカイトの顔を見るのは楽しい。…それにしても、機械のクセに泣いたり笑ったり、起伏豊かで、見てて飽きない。
「はい、マスター、半分この約束でしたよね」
カップ半分、きれいに食べたそれを差し出され、三口は食っただろうか…抹茶のカップを引き換えに渡してやる。
「マスター、いっぱい残ってますよ?」
「お前にやる。食え」
「ええ!?いいんですか?」
「おう」
「…後で返せって言っても、返せませんよ?」
じと目で睨むカイトに溜息を吐く。
「…じゃあ、返せ」
「嫌です!」
即答して、取られまいと後手に隠すカイトに俺はリッチミルクをスプーンで掬う。
(…甘い…)
本当にカイトには甘いな俺もそう思いながら、再び口に入れた一掬いは舌が痺れるほどに甘かった。




オワリ