カイトとマスターの日常小話
「…ったく。どこに、ボカロにお小遣いやってるマスターがいるってんだ。他のKAITOはろくにアイスもらえないんだぞ。それなのに、お前は好きなアイスを自分のお金で買えてるんだから、有難く思え」
「えぇッ!? そうなんですか?」
「そうなんだよ。気になるなら、後で、お前の名前がタグの動画を見ろ。…さて、蜜柑蜜柑と」
上着を取りに行ってしまったマスターを見送り、僕は呆然とした。…毎日、アイスが食べられるのが当たり前だと思ってたけど、それが当たり前じゃなかったなんて…。…他の僕はアイスが毎日、食べられないなんて…。アイス、一日一個を不満に思ってたけど、それは思っちゃいけないことだったの?
「…何、深刻な顔してんだよ?」
後頭部を小突かれ、振り返る。
「…他の僕がアイスもらえる頻度って、どのくらいなんですか?」
「…いいとこで、三日に一回、一週間に一回とか…、酷いときには半年に一回とかだな」
「…信じられない!!」
「…と、言うわけで、俺はケチじゃない。むしろ太っ腹だ。有難く思えよな。それより、買い物、行くぞ」
しゅるりと首にマフラーを巻かれ、僕はマスターを見つめた。
「…マスター、」
「何だよ?」
「大好き」
「…はいはい。…んじゃ、行くか」
頭を撫で撫でされて、このひとが僕のマスターで良かった!!…と、僕は心からそう思った。
作品名:カイトとマスターの日常小話 作家名:冬故