カイトとマスターの日常小話
僕もマスターが決まったって言われたときには、漠然と音楽関係者なんだろうと思ったんですけど(僕と同様の仕様の弟妹は全て、音楽関係者のところに嫁いで(?)いたので)、マスターが本当に音楽知識も何もないひとで、びっくりしましたよ。僕がど素人マスターのもとに送られたのは、僕たちボーカロイドが一般的な家庭でどれだけそこに馴染めるかと試験的な意味合いがあったみたいですけど…まあ、そのお陰で僕はマスターに会えた訳です。
本当に聴く方専門、音楽知識ゼロで…って言うか、マスターは切ないくらいにど素人で…、未だに僕にはオリジナル曲がありません。僕を購入したのは、自分の手元にいつでも声を聴けるように置いときたかったからだそうです。声が好きと言われるのはそれはそれで嬉しいですけど、曲を作るのは無理だと言われ、正直、がっかりもしましたけど。…まあ既存曲ばかりですが色々歌わせてもらってますし、不満はないですよ。でも、作業用に聴き流されてたら、切なくなります。僕じゃなくてもいいんじゃないかって。実際、マスターの手元にはあちらこちらから集めてきたらしいアプリの僕が歌うものばかり集めて編集したCDが沢山、ありましたから。それに嫉妬したくもなります。折角、体を持った僕がいるのにって…思ってたときもありましたけど、マスターがちゃんと僕の歌を聴いてくれてるって解ったから。…僕本人も気付いてない喉の不調に気付いて、のど飴買ってくれるひとですしね。あ、でも我儘を言えば一曲だけでも、マスターが僕の為に作った僕だけの曲が欲しいです。まだ、諦めた訳じゃないですよ。やれば、マスターにだって出来ると思うし、頑張りましょうね。解らないところは僕がちゃんと教えてあげますから。
何だかんだ言ってますけど、僕はマスターがマスターで良かったなって思ってます。…時々、ムッてなるときもありますけど、…本当に僕が片付けた端から直ぐに散らかすし…これさえなければ、いいマスターなんですけどねぇ。
あ、この話、マスターには内緒にしててくださいね。意外に照れ屋なんで、バレると何言われるか解らないし…僕も恥ずかしいので。
そんな訳で僕はマスターが、誰よりもアイスよりも、大好きです。
オワリ
作品名:カイトとマスターの日常小話 作家名:冬故