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カイトとマスターの日常小話

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取り敢えず、三階からフロアを巡って、見つからなければ一階の迷子センターに行くことにした。その前にウチのカイトを探すべく31に足を向ける。子どもを抱え、この荷物は重い。腕がもう既に死にそうだ。鍛えてないからな。最近、鉛筆より重いもの持ったことないぜ。
 それにしても抱き上げたちびかいとは視界が高くなったことが嬉しいのかきょろきょろと落ち着きがない。…小さいのも大きいのもあんまり差がない。好奇心旺盛なのはいいが、それが仇になることもある。俺が悪いひとだったらどうするんだよ。本当に。
「ちび、お前のマスターはどんなひとなんだ?」
マスターの特徴を訊く。ちびかいとは眉を寄せた。
「あのね、やさしくて、いいにおいがするの。ぎゅってしてもらうのすきー」
抽象的過ぎて解らないな。男か女かを訊くべきか。いや、連れであろうボーカロイドを探した方が早いか…と思っていると、案の定と言うか、お約束通りと言うか31の前、カイトがいた。しかもウチのバカイトは誰かと一緒だ。情けない顔でおろおろしている。ところで、眼鏡の女性と背の高い男は、誰だ?

「あ!ますたーとがっくんだ!!」

ちびかいとが突然、腕の中で暴れだす。それに耐えかねて下ろしてやると、ちびかいとはマスターと思わしき女性へと突進していく。
「ますたぁあ!!」

どふっ!!

よろける女性を背の高い男が余裕で、抱き支える。それを見やり、ちょっとほっとした。あのままじゃ、床と確実に仲良くなってただろうしな。
「かいと、どこに行ってたの…!探したんだからね!!」
「マスター、どこに行ってたんですかッッ!!」
ふたりの声が被り、

どふっッ!!!

と、衝撃が来た。床とお友達になるところだったじゃねぇか、この野郎!!お前は自分の図体のデカさを考慮しろ、このバカイトがッッ!!…辛うじて、踏みとどまった俺にカイトがわんわん泣きついてくるのを、呆気にとられたようにちびかいととそのマスターの女性ともうひとりのボーカロイドは見ていた。…そして、周りの視線も痛い…。カイトがちびなら親子で済んだだろうが、この状態は周りからどう思われてんだろうな。…良くは思われてないことは確かだよな。…泣きたいのは俺だっての。そもそも、お前がどこ行ってたんだ!だよ。はあ。俺は深い溜息を吐き、泣き喚くカイトを黙らせるべく、。魔法の言葉を口にする。
「カイト、アイス、買ってやるから泣き止め」
「え、本当ですか?」
…ったく、本当にお前は現金なヤツだな。けろりと涙を止めたカイトに俺は溜息を吐いた。





 ちびかいとと神威がくぽの女性マスターは、「神崎」と名乗った。互いに自己紹介を済ませる。考えてみれば、俺、カイト以外のボーカロイドに会うのも、そのマスターに会うのも初めてだ。家から一歩も外に出ない生活してるからな。
「国見です。ウチの馬鹿が迷惑掛けたみたいで申し訳ない」
「いいえ。でも、ウチのカイトを連れてきて頂いて、助かりました。その上、アイスまでご馳走になって…」
「ウチの馬鹿が迷惑かけたお詫びです」
31でアイスを買い、フードコートの空いている席に腰を下ろす。彼女の隣に当然のように腰を下ろしたのはがくぽで、彼女の膝に収まったちびかいとはアイスを食べるのに忙しい。それは俺の隣に腰を下ろしたカイトも同じだ。形はどうあれ、本質的に大きくても小さくても行動パターンや好みに違いはないらしい。…ってか、ちび、口からアイス、垂れてる。このままじゃ、彼女のスカートが汚れるな。紙ナプキンを掴み、ちびかいとの口を思わず拭ってやる。
「す、すみません」
「いえ。身に付いた癖みたいなものなので気にしないでください」
汚れた紙ナプキンを畳み、恐縮する彼女にそう言って隣を見やる。スプーンを咥えたカイトは幸せそうにへにゃりと笑っている。その口端から落ちそうなクリームを新しい紙ナプキンで拭う。
「…お子様め…」
思わず溜息も漏れようというものだ。それに彼女がくすりと笑った。
「御兄弟みたいですね」
「よく言われます。まあ、歳の離れた妹がいるのでその延長で」
「そうなんですか」
「はい。それにしても、カイトにがくぽも一緒に暮らしてるですね。賑やかそうで羨ましいな」
会社に勤めてる頃はカイトがひとりでは寂しいだろうからとボーカロイドをもうひとり購入しようかと迷っていたりもしたのだが、結局、カイトひとりのままだ。賑やかだろうな。カイトの弟妹を家に迎えたら。ああ、でもそうなると、カイトは「お兄ちゃん」だからと俺に甘えてこなくなりそうだ。
「はい。一人暮らしだったんですけど、すごくにぎやかになりました。今じゃ、もう一人では暮らせない気がします」
「あ、それ解ります。俺もそうだし」
一人、誰もいない部屋に帰り、しんと静まった暗い部屋に電気を点けるのがどれだけ孤独感を募らせるか…。妹が嫁いでからは、待つひとのいない家に帰るのが嫌で仕事ばかりしていた。今は「ただいま」と言えば、「お帰りなさい」と待つひとがいる。まあ今は自宅営業な訳だが、カイトがいるだけで家は引きこもりたくなる程居心地が良くなっていた。
「カイトが来るまでは、家に帰るのが嫌で仕事三昧だったのが嘘みたいですよ」
「私もです。前は一人の部屋に帰るのが嫌で友達と夜遅くまで遊んでばかりいたんですけど、今は直行で帰ります」
そんな話で盛り上がり、俺と彼女とは意気投合してメールアドレスを交換して別れた。終始、がくぽは無口で反対にKAITO同士気が合うのかちびっさいかいととウチのバカイトはきゃわきゃわとアイスの話で盛り上がっていた。それにしても彼女と話してる間、ずっとがくぽに警戒されてたな、俺。メルアド交換しませんかって、彼女が言い出したときには殺されるかと思ったよ。きっと、彼は彼女のことがマスターとしてではなく別の意味で好きなんだろうなと何となく解ってしまった。まあ、そう言うのもアリだよな。ボーカロイドって本当に人間と変わらない。どこがどう違うのか解らないが、一昔前に想像してたものとは全然違うな。本当に色々だ。




「マスター、」
「何?」
カートを押し、当初の予定通り食料品売り場を回る。今日の献立は何にするか…カレー食いたいんだが、コイツ、辛いの駄目だしな。
「…僕以外のボーカロイド、欲しいですか?」
ジャガイモを吟味してカートに入れる。視線を上げればぎゅうっと俺のシャツの裾を小さな子どもみたいに掴んだカイトと視線があった。
「何だ、いきなり?」
「だってマスター、賑やかなの羨ましいって…」
彼女と俺の会話をカイトは訊いていたらしい。アイスに夢中でこちらには気を払ってないと思ってたんだが、カイトはこういうのを直ぐに気にする。
「賑やか具合にもよるけどな。充分、今は賑やかだと思ってるが」
ぽっかりと胸に空いた穴は塞がれて、両親がこの世を去り、たったひとりの妹が嫁いで、暫くは胸を穿つような孤独感に苛まれ、それを仕事をすることで忘れようとしていた。でも今、自分が孤独だと寂しいと思うことは今はない。
「本当に?」
「本当。他に家族増えたら、今日みたいに迷子になったお前をそうそう探しに行けなくなりそうだしな」
そう言うと、カイトは口を尖らせ反論してきた。