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知人の幼馴染は現在進行形で引き篭もり気味。ついこの間意図せずそう漏らして、しまった墓穴を掘ったという顔をしていた。ついでに丁度ある掘りたての穴に入ってしまいたいとも。
別にそこまで無差別に人をお遊びに巻き込んではいないし、知り合いには特別対応をしているのに少々扱いが酷い。慣れているがその慣れ自体が酷さを物語っている。だがまあとりあえず、自分への警戒度を改めて確認させて貰った。しかしてその時ふうん、で終わった後に思い出した際にはへえ、になった。結構いい勘してるよね、彼はというよか自分も含めて周りの人間全般は。

世の中には視える人と視えない人が居る。俺は前者で、今まで出会った皆は後者。即ち同類に出会ってない故に、自分は少数派に位置する訳だ。多数決にも問題はある。それと一つの可能性として、唯一ということも在り得る。
性格嗜好言動行動から異端の視線を向けられるも、視える視えないという差異は充分影響が強いと思う。ほら、皆勘がいいから。宙にゆらゆら浮かぶそれらを視る自分と他人には、明確過ぎる線引きがされているとやはり感じるのだ。


定期的にその幼馴染の住むアパートを知人は訪れて、構ってくれやら俺とお前の仲だろさあ相談して来い、頼り甲斐溢れる広い胸を今なら友情価格で貸し出すぞ、とやら説得しているらしい。ご苦労様。それでも成果は芳しくないみたいで、なんでも高校に進学し、上京してから引き篭もり気味が酷くなったとの調査結果が出る。
学校からアパートまでは真っ直ぐ帰り、いくら誘われても道草のみの字にも構わない。必要最低限の買い物もネット通販で済ませる。その徹底した姿勢は、正にお手本とするのに望ましい。浮かび漂うあれらは、室内にはあまり居ないケースが多いのは経験で解っているので。流石に己の精神が強いと自負していても、終日ゆらゆらを眺めるのは勘弁願う。一息吐く空間は必要だ。


だから当事者の元を訪れてみてやっと判ったのだけれども。幼馴染や、視えない多数派には決して解らない臆病加減さに。あと、同類であるとかを。耳新しい言葉を舌先で転がして得た感触に、新鮮さと心地良さを覚えた。





「毎回いきなり来るのは遠慮して貰えませんかね」
「だって君あんまり外出しないから、会いに行かないと」
「外は一杯居るから怖いんです。臨也さんは神経太過ぎです」
「ありがと。それにさ、一人で視てるよりはいいでしょ」
「…はあ、まあ。でも褒めてはいないですよ」

今日も今日とて、俺は臆病者な同類が避難するのを肯定する。独り占めに近いしね。
作品名:視界を共有 作家名:じゃく