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ゆらゆら。今日も漂い日和で何より。でも僕にとって、それは今日も試練が待ち受けているということを意味する。慣れてしまえ、と思うが慣れないからこその試練。
何か悪いことでも知らない内に犯してしまったのか。問い掛ける相手も持たない自分には、正答も誤答も持てない。
以上、今も鮮やかに思い起こせる苦味のある記憶より抜粋。一人ぼっちが、二人ぼっちになるまでは大抵こんな感じだった。同類による同類だけの発見は、同類にしか出来得ないことを学習する前のことと同義でもある。


あの人に声を送れば、まるで空の色が自由気ままに変わることが当然の様に、海の波が一時も同じ形を維持しない様に、当たり前に帰ってくる。歪んでいたり捻くれているけれど、それでも僕が渇望した返答。打てば響く音。

だが、望んだ存在が何時までも手の届く場所に留まるとは限らない。二度あることは三度あるかもしれないのだ。僕とあの人以外の、居るかもしれない同類にはまだ会っていないだけ、ということ。その人を見つけたら、半ば引き篭もっている臆病者である自分を捨てて行ってしまう可能性。今日も漂うあれらが居るのに、隣にあの人が居るとは定まっていない。チャイム無しの訪問は何時か途切れる。そんな想定をしながら訪問者を迎える。幼馴染だけでも充分なのに、贅沢とはなんとも恐ろしい。





「本当はリアルには、俺は霊が視えるひとだったのだ!ドッキリしただろ帝人?」「あの、実は私物心ついた頃から、」「先輩、実は聴いて欲しいことがあるんですよ」『何故かいつも、ゆらゆらとした何かを視えている』「笑うなよ、俺には変なものが視えるんだ」以下略。続く鈍く重い衝撃のカミングアウト。嘘は真か検討する間も与えられなかった。揃ってそれらを喰らった元二人ぼっち同志は、仕様が無いとばかりに互いに顔を見合わせて苦笑した。

そんな穏やかな夢をみた、と今日もアポなしの臨也さんに話した。苦笑いされる。暖かい手を繋がれる。夢じゃないよ、との答えを貰う。強張りが剥がれている笑みを、やっと返せたとは思う。


「全て夢だったらどうします?」
「せめてもの抵抗で、覚めない夢にするよ」
「クサいです。キザったらしいです。鳥肌ものです」
「ありがと」

醒めない夢は何故こんなにも心地がよいのだろう。答えは今日も訪れるあの人に訊いてみようか。
作品名:視界を共有 作家名:じゃく