○○トーク!
「せやろなぁ…アンタ毎日サッカーサッカーで、恋愛ごとにイチバン縁なさそうやし」
「キャプテンは好きな子とか、付き合いたいなって子は居ないの?」
「………アンタも十分直球やんか…」
「ふふっ、ありがとう」
「いや…誉めてへんし……」
「そうそう、それ!…付き合うって、どういうことすればいいんだよ?あんまり難しいことだと、オレ一生出来る自信無いぜ………」
本気で分からないらしく、マンガだったら煙でもあげそうな勢いでウンウン唸っている円堂は床に座り込んでしまう。
宇宙人に平気で挑んで行ける円堂のガッツも、『色恋』相手には形無しのようだ。
「うん…付き合うって定義は人それぞれだと思うけどね…。例えば、好きな人が居たら毎日逢いたいなとか、逢って話しをしたいな…とか、もっと一緒に居たいなって、思うじゃない?」
「せやな。アタシかて本当は一分一秒でもダーリンと離れたく無いし!」
「そんな風に思う2人が一緒に過ごすことを『付き合ってる』状態って言う…のかな。僕はそう思ってるけど」
「そうそう。デートしたり〜電話したり〜メールしたり〜一緒に帰ったりな!」
「ん…?それって………」
「あ!みんなこんな所に居たのね!そろそろ午後の練習が始まるわよ〜!」
吹雪先生によるありがたい恋愛講座に結局5人は座り込んでしまい。
それまでへぇ〜とかふーん…などと聞く一方だった円堂が、初めてハッキリとした反応を返したその時、グラウンドから小走りで駆けて来る秋の声が響き渡る。
「アカン!ダーリンに逢う前に色々整えとかな!…ほら塔子!女子は仕度に時間がかかるモンなんや!さっさと行くで!!」
「え、ちょ…リカ!!!」
慌しく駆けて行く女子2人を半ば呆然と見送る3人は、何とも言えない空気に苦虫を噛み潰したような顔をしながら立ち上がる。
「さー!午後も練習だっ!」
すっかり気持ちがサッカーモードに切り替わっている円堂と、先ほどからずっと様子のおかしい豪炎寺を交互に見遣りながら、吹雪は満面の笑みで円堂の背中にターゲットをしぼり、声をかける。
「ねぇキャプテン、さっき何か言いかけたみたいだけど…?」
「ん?…あぁ、吹雪や浦部が言ってるの、オレちょっと分かるなぁと思ってな」
「………念のために言うけど、対象が『サッカー』っていうのは無しだよ?」
「……………」
「あー…確かにサッカーのことはずっと考えてたいけどさ!…いや、ある意味サッカーのことなのか…?」
「どうしたんだい…?」
「ずっとさ、『コイツと一緒にサッカーしたい!もっと話してたい!また明日も明後日も一緒に居たい!』って思うヤツが居るんだけど……」
「…へぇ……そうなんだ…それはとても素晴らしいことだよね、豪炎寺くん?」
「ッ…ゴホっ……!!!!」
「あぁ、いや、『誰か』ってことは僕達に伝えてくれなくてもいいよ、キャプテン。恋は忍んでこそ美しい・って言うからね」
「………しのん…で…?」
「秘密にするってことだよ。そういうことは二人だけの秘密にした方が、よりお互いの絆を強く感じることが出来るんだって。…ね、豪炎寺くん?」
「ふっ……吹雪が言うなら…そうなんだろうな…………」
「へー!すげーな吹雪!」
「ふふっ…ありがと」
「…でもオレ、結構それ毎日言っちゃってるんだよな…電話とかメールとかでさ。…これってダメなのか………?」
「っ!!!立ち止まるな!こっちを見るな!円堂!!!!!!」
「えー…だってそんなこと言われたらダメなのかって心配になるだろー?」
「………………大丈夫だよね?豪炎寺くん^^」
「………誰か今すぐ染岡を呼び戻してくれ…」
「えっ?ダメなのか!?なぁ吹雪!オレどうしたらいいっ!!?今から忍ぶべきかっ????」
結局。
あまりに戻らないことを不審に思った鬼道が、何かあったのかと大焦りで呼びにくるまで。
3人のボーイズトークは続いたのであった。
<end>