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哀悼

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まず貴方が居る事に意味が有り、
また貴方が居ない事に意味が有った。

全ては此の組織の為で有り、
其れを率い来た貴方の為でも有った。

貴方がどう思っていたかなど関係無かった、
ただ其れに苛立ちを覚えた。

それが、全ての理由……。




先ず彼を組織から引き剥がし、次のトップに変えなければならない。

候補は居た。
それでも彼が、都合良く引く筈が無い。

それ故、組織内で内乱を起こし……彼を追い出すしか無いと思った。
今の自分では、それ以外の手を考える頭もないらしい。

窓から見える景色は段々と鼠色になり、恰もこれから起こる出来事に合わせているかの様にも見える.
次いで今、彼は此処にいない。
雨より先に、雷が落ちるのではないか。

カツン、カツンという足音を耳にし、それに誘われるように振り返る。
予想通り、待ち人着たり。

何時もと変わらずスーツを着て……勿論何も持ってはいないだろう。
後ろ手にカーテンを引く私を一瞥し、特に変わった様子も無く口を開いて一言。

「…おい、行く」
「ええ、分かりました」

そう短く自分を呼んだ男は、返事を待つでもなく踵を返した。

名前など知らなくて良かった。
これから先は、ただボンゴレII世(セコーンド)と呼んでいれば誰一人として違和感を抱くものはいないだろう。
それにその呼び名の方が、彼の後釜であるということがはっきりと分かる。

それで十分だった。

私は彼の興した組織が、彼の意思にそぐわない勢力に成っていくのが気に食わなかった。
彼と意を共にしたい訳では無いく、拡大していく組織……それは私個人として全く異論無い事だった。

しかし、組織の端で起こる厄介事に頭を抱えている彼を見ると、無償に苛立った。
だから私は、彼をボスの座から引き摺り降ろしてやろうと考えたのかもしれない。

……もっと他の理由があっても、今はそれで良い。

「情緒安定に欠けるな。術士がそれで勤まるのか」
「何を言っているのです。私はこの組織の拡大のために不利益となる失敗などしません」

興味が無いと言うように話を止めた私の数歩前を歩く人物。
何故か彼は、稀に彼を思い出させる。

いや、思い出させると言うのは違う。考えずとも、彼の事を忘れたことなど無い。
私を引き入れ、従えていた人物であり、何より……今から自分が追い出すのだ、忘れる筈もない。

「ボンゴレ霧の守護者の実力、特と御覧になると良い」

外は、雨が降り出していた。
きっと数十分すれば、幾分強くなるだろう。

その時地面に哀しく残る水溜りは、一体何色になるのだろうか。
水溜りになるかどうかもわからないそれは、果たして正しい選択だったのだろうか。

答えなど求めてはいない。
今は無駄なことを考える必要が無い。
全ては事が片付いてからでも、良いのだろうか。

作品名:哀悼 作家名:ゆず