その愛情、出来損ない。
新しいクラスの自己紹介、というのはなんとも退屈だ。
俺は椅子に寄り掛かり、昼は購買で何を買おうか、なんてことを考えていた。
クラスメイトとなった人間たちが代わり映えのない自己紹介をしている中、その男が立ち上がった。
「はじめまして、折原臨也です。好きなものは人間。嫌いなものは理屈の通らないものです。よろしく」
ざわ、とクラスがざわつく。
変な奴、と思い俺は男の方を見た。
別にどこにでもいそうな男だ。
しかし目つきがどこか、俺の嫌いな色を含んでいた。
俺はコイツを好きになれない。
考えるより前に理解した。
関わり合いにはなるまい、そう思った。
それでも、その男の姿はちらちら視界の中に入った。
折原臨也は目立つ人間だった。
振る舞いや発言が大袈裟で、クラスからはなんとなく浮いていた(人のことは言えないが)。
俺は人付き合いに積極的な方でもなかった。
それでもクラスに何人か話す友人はいたし、それでいいと思っていた。
「平和島君?」
折原臨也が俺に話しかけたのは、数週間経ってからの移動教室の時だ。
「・・・なんだ?」
言葉を交わすのも、正面から目を合わせるのも今がはじめてだ。
真正面から見ると、目つきが以外と鋭いことが分かる。
彼はその鋭い眼を細めた。
「俺、折原臨也」
「ああ…知ってる」
「本当に? あんまり周りに興味なさそうなのに」
へらり、と胡散臭い顔で笑う。
「…俺になんの用だ」
「自己紹介しようと思って。でも必要なかったみたいだね」
折原臨也は肩をすくめるジェスチャーをする。
イラ、としたが、抑えた。
さすがに初対面の人間でキレたくない。それも学校では。
中学は本当に大変だった。高校では穏やかに過ごしたいのが俺の切なる願いだった。
「・・・クラスの自己紹介の時、変わったこと言ってたろ。だから覚えてた」
「変わったこと? そんなこと言ったっけ?」
「人間が好きだと」
「ああ、あれね。嘘」
「は?」
「好きなんてもんじゃない。むしろ人間を愛しちゃってるから」
とてつもなくいい笑顔で、自称博愛主義者は言った。
好きになれない奴、から、絶対好きになれない奴、に評価が変わった。
この男は人間を愛しているという。
なんて胡散臭い男だ。
俺は、どちらかといえば人間が好きではない。
(怖い)
(暴力漢)
(こっちにこないで)
俺は椅子に寄り掛かり、昼は購買で何を買おうか、なんてことを考えていた。
クラスメイトとなった人間たちが代わり映えのない自己紹介をしている中、その男が立ち上がった。
「はじめまして、折原臨也です。好きなものは人間。嫌いなものは理屈の通らないものです。よろしく」
ざわ、とクラスがざわつく。
変な奴、と思い俺は男の方を見た。
別にどこにでもいそうな男だ。
しかし目つきがどこか、俺の嫌いな色を含んでいた。
俺はコイツを好きになれない。
考えるより前に理解した。
関わり合いにはなるまい、そう思った。
それでも、その男の姿はちらちら視界の中に入った。
折原臨也は目立つ人間だった。
振る舞いや発言が大袈裟で、クラスからはなんとなく浮いていた(人のことは言えないが)。
俺は人付き合いに積極的な方でもなかった。
それでもクラスに何人か話す友人はいたし、それでいいと思っていた。
「平和島君?」
折原臨也が俺に話しかけたのは、数週間経ってからの移動教室の時だ。
「・・・なんだ?」
言葉を交わすのも、正面から目を合わせるのも今がはじめてだ。
真正面から見ると、目つきが以外と鋭いことが分かる。
彼はその鋭い眼を細めた。
「俺、折原臨也」
「ああ…知ってる」
「本当に? あんまり周りに興味なさそうなのに」
へらり、と胡散臭い顔で笑う。
「…俺になんの用だ」
「自己紹介しようと思って。でも必要なかったみたいだね」
折原臨也は肩をすくめるジェスチャーをする。
イラ、としたが、抑えた。
さすがに初対面の人間でキレたくない。それも学校では。
中学は本当に大変だった。高校では穏やかに過ごしたいのが俺の切なる願いだった。
「・・・クラスの自己紹介の時、変わったこと言ってたろ。だから覚えてた」
「変わったこと? そんなこと言ったっけ?」
「人間が好きだと」
「ああ、あれね。嘘」
「は?」
「好きなんてもんじゃない。むしろ人間を愛しちゃってるから」
とてつもなくいい笑顔で、自称博愛主義者は言った。
好きになれない奴、から、絶対好きになれない奴、に評価が変わった。
この男は人間を愛しているという。
なんて胡散臭い男だ。
俺は、どちらかといえば人間が好きではない。
(怖い)
(暴力漢)
(こっちにこないで)
作品名:その愛情、出来損ない。 作家名:たかべちかのり