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たかべちかのり
たかべちかのり
novelistID. 692
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その愛情、出来損ない。

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何度も言われたことのある言葉が頭をかすめ、俺は嫌な気分になる。
小学生の時、絡んできた上級生を半殺してしまったことがある。
後悔は今でもしていないが、その時俺は身に染みて理解した。
人間は、壊れやすい。
そんな脆いもの、好きになれそうにない(だって壊してしまいそうで)。
誰も彼もを愛するなんてガンジーやマザー・テレサくらいでないとできないんじゃないか。
(余談だが、ガンジーは俺が密かに尊敬している人物だ。)
「ねえ、今なに考えてた?」
「……ガンジーとマザー・テレサ」
「え? なんで? …平和島君って面白いねー」
けらけらと男は笑う。
イラ。
まずいな、と思い俺は踵を返した。
「いやー。予想外で実に面白いよ、平和島君」
「呼ぶな、鬱陶しい。俺はお前が嫌いだ」
本能が告げる、コイツは駄目だと。
拳よりも言葉が先に出た自分を褒めてやりたい。
「じゃあシズちゃんって呼ぶねー」
「聞いてンのか人の話!!!?」
反射的に、廊下の壁を蹴飛ばす。
めこ、と大きな音を立て、壁がめり込んだ。
しまった、と思った時はもう遅かった。
ざわり、と周囲がざわつく。
廊下を歩いていた生徒たちは、俺と壁を見て明らかに怯んでいた。
そのうちの一人と目が合うと、ひっ、と声を上げ逃げだした。
それを合図に他も小走りで去り、廊下は俺と折原臨也の2人きりとなった。
俺は思わず舌打ちする。
まただ。
またやってしまった。
あのおびえた目。奇異なものを見る目。
それを払うようにがしがしと頭をかいた。
「ねえ、シズちゃん」
「…まだいたのか! とっとと行っちまえ!!」
そもそも事の原因を作ったのはこの男だ。
俺はイライラに任せて怒鳴った。お前も俺が怖いんだろう、と。
しかしこの男は、予想外の言葉を発した。

「俺達さ、友達になれると思うよ?」

一瞬、何を言われたのかわからなかった。
授業開始のチャイムが鳴り、はっと我に返った。
移動教室の時間はなくなってしまった。
コイツのせいで穏やかな高校生活は泡と消えた。
それなのに、頭に上っていた血はすっと引いていた。
さっきの一言で。
「…無理だね。俺は嫌だ」
「そう言うと思った」
「…てめぇのせいで、遅刻だ」
「いいじゃん、一緒に怒られようよ」
折原臨也は相変わらず胡散臭い笑顔で俺の腕を引っ張って走った。
ふりほどこうと思えばできたが俺はそれをしなかった。