その愛情、出来損ない。
認めたくはないが。
本当に認めたくはないのだが。
友達になれると思うよ。
生まれて初めて言われたその言葉が。
嬉しかった。
今となっては完全に否定したい過去だ。
顔を合わせれば殺意しかわかない。
それでも、あの時あの瞬間だけは。
あいつと友達になれると思った。
壊れやすい他人を以前より好きになれたきっかけは。
確かにあの言葉だった。
あの男は人類愛の方向性を間違えたまま大人になった。
ガンジーやマザー・テレサとは程遠い存在だ。
俺は今でも人間があまり好きではない。
それでも、時々あの言葉を思い出すと、妙な苦さが体を巡る。
そんな時、俺は決まって辛いタバコを吸うことにしている。
この苦みを、煙と一緒に混ぜ込んで。
吐き出せればいい、と思いながら。
作品名:その愛情、出来損ない。 作家名:たかべちかのり