二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

愛してると言えない

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
「あーあー、まったくー。いくら君が無病息災を体現したかのような素晴らしく解剖したい体でも・・・なんでセロハンテープでしちゃうかなぁ」
「・・・悪い」

高層マンションで平和島静雄は岸谷新羅から治療を受けていた

特に高校時代からよく世話になっているのだが、大人になるにつれ、時が経つにつれ、彼から治療を受ける回数も少なくなっている
それは静雄の体が自己再生を繰り返し、徐々に強靭になっているからだろう

今日は珍しく強化ガラスを何枚も殴ってしまったので流石に掌に切り傷ができてしまった
結構血も出てきて、トムさんに病院行ってこい、もしくはお前の友達の医者に治療してもらえ、とのことだったので甘えてここにきたのだ
その時のトムさんは何故かにやにやしていたのが疑問だ

静雄は特に迷うことなくこの家の扉を叩いた
いない時もあるが、今日はいたらしい
生憎セルティは仕事と夕飯の買いだしに行っているようだ

そして傷を見せて、冒頭に至る


「今回はなんでこんな傷ができたのさ?普通のガラスなら小さな擦り傷かちょっとした切り傷にしかならないだろうに・・・すごい裂けてる」
「なんか、強化ガラスらしい」
「へえ~、またお金のかかるものを・・・うーん、パックリいっちゃってるし、頑張って縫おうか」

折れなさそうな針はあったかな・・・むしろキリを探すべき?あとワイヤー?いや、ないな

そう言いながら、新羅は戸棚を探っている
右へ左へ戸棚を探りながら動く様は何故か小動物のソレを思わせる
元来平和を好み、小動物を愛でたい気性なので頭を撫でたいと思った

「あ、見ーつけた!じゃあ、さっそく縫っちゃおうか」
「おう」

消毒して、一応局部麻酔をして縫合される
流石に自分が縫合されるのを見る気はないから、傷口を見ている新羅を見ることにした

小学3,4年頃
俺が初めて俺の異常に脅かされ、入院し、そして退院した頃から交流が始まった
動機を聞いた時はなんだこいつとか思った気がする
まず小学生が解剖したいって笑顔で言うのがおかしい
解剖を拒否しても本気か分からない誘い文句を言いながら、なんだかんだ一緒にいた
入院しても毎日(いや、時々来なかったけど)お見舞いに来て、勉強教えてくれたり、プリントを持ってきてくれた
幽ともそれなりに仲良くなって、時々芸能界とか本の話をしてたし
解剖したがりな部分を抜けば、新羅はいい奴だった

それが大事な奴に変わったのはいつだろう

6年の頃、既に俺は学校中の生徒や教師、近所から恐がられた
俺に話しかけてくるのは新羅と幽、時々担任くらいと俺を知らない悪ガキくらいだった

「なあ、新羅」
「なんだい、静雄君」

学校から帰り道
途中で牛乳を買って、街中を歩いている時だったと思う

「お前はさ、俺が怖くないのか?俺といても何の得もないだろう」

常々思っていた疑問
確かにこいつは解剖が好きで俺を解剖したいと誘ってくる
でも二年も言い続けて俺が了承するとは思ってないだろうし、一緒にいても俺のつれだと言われ、クラスから疎遠になってるのも見た事があるし、俺に殴られた奴がコイツに目ぇつけてリンチしてたのも
もちろん、俺のせいだって分かってるから助けたけどよ

なのにそんな嫌な目にあってるのに、どうしてこいつは俺と一緒にいてくれるんだろう
幽とは違う、血の繋がらない全くの他人だというのに
こんな”暴力”を怒り任せに揮い、いつ命の危険や暴力に晒されるかわからないのに・・・俺でさえ自分が恐ろしいと、怖いと感じるというのに
そう質問すると新羅はきょとんと眼を丸くして、パチパチと瞬いて、何の戸惑いもなく返答してきた

「友達って損得でするものじゃないだろう?静雄君は違うの?」
「え?」
「それに強くたって弱くたって静雄君は静雄君だからね、俺は静雄君と一緒にいて楽しいからいるわけだし・・・そりゃ解剖もしてみたいけどさ!
静雄君が嫌いな”力”も僕がいじめられてたらソレで助けてくれるし、重たいもの持ってフラフラしてると手伝ってくれて結構優しいし
実はちょっと不器用でぶっきらぼうでブラコンで沸点が低くて口下手だけど、小動物が意外と好きだし、プリンに牛乳好きで案外可愛いことを知ってるからね!」
「・・・おい、それは褒めてんのか?貶してんのか?」

照れ隠しに新羅のほっぺを引っ張った
もちろん、手加減をして・・・しなかったら千切れたりしそうだったしな

「ひふぁいひふぁひほ、ひふほふふ(痛い痛いよ、静雄君)」

正直、嬉しかった
”力”も碌にコントロールできずに”暴力”の限りを尽くして、誰からも怖がられる俺を認めていることに
そして、”暴力”以外で俺”自身”を見ていてくれたことに
動機はかなり不純ではあるが、それがあったとしても、俺は嬉しかったんだ

その時からかもしれない、新羅が特別になったのは

作品名:愛してると言えない 作家名:灰青