二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

草々

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

 それは静かに揺れる水面のように、囁くよりも大きく、呟くよりも小さな声は二人の髪を撫でた風にも空を翔びながら囀ずる小鳥にも掻き消されることなくアイクの鼓膜を通して伝わった。
 やや俯きがちなマルスの長い睫毛は瞳に影を伸ばし、傷の少ない手のひらは自らを落ち着けるように胸の上に添えられていた。よくよく見てみると頬に浮かぶ朱の色が少し濃い。

「な、なんちゃって、ちょっと偉そうというかなんだか凄く真剣に言ってみたけど、僕、なんか……」

 ぱっと顔を上げて少し無理矢理な笑顔を浮かべると、先程の甘く和らいでいた言葉を誤魔化すように明るい口調になったマルスの腕をアイクは思わず掴んでしまった。驚いた彼は話の続きを言えなくなってしまう。

「……マルス」

「な、なに?」

「お前がいつもそうやって思ってくれているのなら、ずっと勝てる気がする」

 マルスの身体が微かにぴくりと揺れた。閉じた唇が引き締まり頬は余計に紅くなる。
 アイクは愛する彼に気遣われ支えられ応援され、そしていつも彼に見ていてもらいたい気持ちを糧に、築き上げてきた勝利の回数を増やすための努力までもが理解されていたのだ。
 マルスが彼の想いを知っていて発言したとは思えない。
しかしアイクがあまりの嬉しさに発した言葉に、春の花のようにほんのりと淡く紅く染まった頬は何を意味しているのだろうか。

「そ、そう……?」

「ああ」

「……そっか」

 呟いて、雪融けを促す陽射しのように細まり照れる瞳と、一言紡ぎ弧を薄く描いた唇は笑った。
 その安堵しているような表情は不安を感じる躊躇いを踏み越えた、例えるなら想いを伝えて突き放されなかった時の喜びに似ていた。
 アイクは、どうしてマルスがそんな顔をするのか解らなくて、初めて目にした表情に困惑しながらも赤面するしかなかった。ついもっと見ていたくて手を離せないままでいる。



 もし、俺が好きだと言ってお前が心から幸せそうに同じだと囁いてくれたら、俺は今のお前のように微笑むことができるのだろうか。

 さっきの言葉が、親友としてのものではなくもっと深い、密接した関係を望んでいる意味として生まれたのだと信じたい。

(アイクがいつも頑張ってるのは、解ってるつもりだから)

 お前のことが好きだということも解ってほしい。そう言ったらどんな返事をしてくれるだろう。
作品名:草々 作家名:rrr