【APH】無題ドキュメントⅧ
ああ、お前の為ならば、この身を削り、尽くし、命を投げ出すことに寸分の躊躇いも覚えない。
ドイツ統一。
その結果が自分の存在の消失と引き換えだとしても、俺はそれを喜んで受け入れよう。
あの青い目を見た瞬間、手に入れた恍惚と恐怖。
この子どもが俺を支配し、俺の身を喰らい、国となる。その何とも言えぬ得がたい恍惚と足が竦みそうになる恐怖がじわりとこの身を足元から飲み込んでいく。
怖い。
だが、俺は選ばれたのだ。こんなに誇らしく、名誉で喜ばしいことは他にはない。
俺を愛し、俺が愛した王を失ってから、投げやりに生きてきた俺に子どもは生きる意味を与えてくれた。
フリードリヒ、未だに忘れられぬ偉大なる俺の王よ。
お前の偉業のすべてはこの為にあった。俺のすべてはこの子どもの為にあった。
お前が心血注いで作り上げた俺の身体を糧に、この子どもは大きくなる。
今なら、解る。
俺は、この子どもに捧げられた贖罪の羊なのだと。ただ、その為だけに、俺は国になったのだ。
1828年 ヘッセン=ダルムシュタット大公国フランクフルト
「プロイセン、終わったぞ」
「おう。俺も終わったぜ」
ヘッセン=ダルムシュタット大公国とプロイセン王国との間で北ドイツ関税同盟が成立。
互いのサインの入った書面を交換し、プロイセンはヘッセンを見やった。
「お前が同盟に参加し、署名してくれて助かったぜ。これで、ラインライトからの物流が本国に繋がる」
「…ま、この関税同盟は俺にとっても利はあるからな。…でもまあ、他には警戒されそうだな」
三十を出たばかりの風体の青年は溜息を吐き、プロイセンを見やる。大公国は先の第二次パリ条約でプロイセンが獲得したラインライトの地と隣接している。飛び地となった領地を繋ぐ為にも、プロイセンはこの関税同盟を結ばねばならなかった。
「…まあ、それは黙らせるさ」
うっすらと笑みを浮かべるプロイセンにヘッセンは小さく息を吐いた。
(…関税同盟に署名して正解だったな。…今のプロイセンを敵に回したらどうなるか…)
ドイツ統一。
その結果が自分の存在の消失と引き換えだとしても、俺はそれを喜んで受け入れよう。
あの青い目を見た瞬間、手に入れた恍惚と恐怖。
この子どもが俺を支配し、俺の身を喰らい、国となる。その何とも言えぬ得がたい恍惚と足が竦みそうになる恐怖がじわりとこの身を足元から飲み込んでいく。
怖い。
だが、俺は選ばれたのだ。こんなに誇らしく、名誉で喜ばしいことは他にはない。
俺を愛し、俺が愛した王を失ってから、投げやりに生きてきた俺に子どもは生きる意味を与えてくれた。
フリードリヒ、未だに忘れられぬ偉大なる俺の王よ。
お前の偉業のすべてはこの為にあった。俺のすべてはこの子どもの為にあった。
お前が心血注いで作り上げた俺の身体を糧に、この子どもは大きくなる。
今なら、解る。
俺は、この子どもに捧げられた贖罪の羊なのだと。ただ、その為だけに、俺は国になったのだ。
1828年 ヘッセン=ダルムシュタット大公国フランクフルト
「プロイセン、終わったぞ」
「おう。俺も終わったぜ」
ヘッセン=ダルムシュタット大公国とプロイセン王国との間で北ドイツ関税同盟が成立。
互いのサインの入った書面を交換し、プロイセンはヘッセンを見やった。
「お前が同盟に参加し、署名してくれて助かったぜ。これで、ラインライトからの物流が本国に繋がる」
「…ま、この関税同盟は俺にとっても利はあるからな。…でもまあ、他には警戒されそうだな」
三十を出たばかりの風体の青年は溜息を吐き、プロイセンを見やる。大公国は先の第二次パリ条約でプロイセンが獲得したラインライトの地と隣接している。飛び地となった領地を繋ぐ為にも、プロイセンはこの関税同盟を結ばねばならなかった。
「…まあ、それは黙らせるさ」
うっすらと笑みを浮かべるプロイセンにヘッセンは小さく息を吐いた。
(…関税同盟に署名して正解だったな。…今のプロイセンを敵に回したらどうなるか…)
作品名:【APH】無題ドキュメントⅧ 作家名:冬故