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【APH】無題ドキュメントⅧ

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あの王の時代のように生き生きとしている。先の大戦で死に体で消えそうだったとはとても思えない。…あの王亡き後、ただ国家が存続するから生きていただけに過ぎない男は、ここに来て、生気を取り戻した。自分の存在の意味を思い出したのだろう。その意味を思い出させたものは、一体、何か?
(…神聖ローマ…。いや、違う)
ヘッセンはプロイセンが自らの傍らに同席させている子どもを見やる。子どもの年はひとで言えば、7、8歳程。白磁の肌に目映いほどの美しい金の髪。冬の晴れ渡った空を思わせる青い瞳は冴え冴えとヘッセンとプロイセンを見つめていた。
(…ゲルマンそのものだ…)
かつて一族を率い、北を目指し、定住の地を求めた一族の長ゲルマンは白磁の肌に鋼の身体、陽光に輝く金の髪に美しい青い目をしていた…その姿を一度だけ、ヘッセンは目にしたことがある。だから、子どもを目にして本能的に畏敬と畏怖に身が竦む。何故、そんな子どもがオーストリアではなく、プロイセンの傍にいるのか…。そして、この目の前の男はこの子どもを手中に一体、何を目論んでいるのかと…。
「…プロイセン、彼は?」
「ああ、紹介がまだだったな。…正式にまだ名はないが、」
促すようにプロイセンが子どもを見やれば、子どもはふっくらと艶のいい唇を開いた。

「…ルートヴィッヒだ」

少し高い子どもの声。閉じて結ばれる唇。プロイセンの唇が開く。
「…今は名前がない。俺がいずれ相応しい名を与えるつもりだ。…ルートヴィッヒは我らの上に立つ王だ。…ヘッセン、お前には解るだろう?」
赤い目がうっとりと笑う。それが、いずれ夢物語りではなく、この男が現実のものとするのだろう。この男がそう言うのだ。

 だが、子どもにちゃんとした名が付けば、この男の存在はどうなってしまうのか?

(…プロイセンのことだ。この子どもを傀儡とするつもりかもしれない)

 食うか、食われるか…。
 この世界は、弱肉強食。

 やるか、やられるか。

 プロイセンが子どもを御するか。
 子どもがプロイセンを喰らい、玉座に着くのか。

 その様を見届けるのも面白いだろう。
 


 既に王の風格を持ち、静寂を保つ子どもがただの子どもである筈がなかった。










「…良かったのか?公式の場に、おれを同席させて」
作品名:【APH】無題ドキュメントⅧ 作家名:冬故