For one Reason
くるりと振り向いた月は口角を吊り上げて、むにとLの頬をつまんだ。
「いたたたたたたた」
「お仕置きだ。内蔵を吐くかと思った」
間近に月の綺麗な顔を見上げて、Lは笑った。
「笑うなよ」
「幸せだと思ったのです」
「・・・・・・ほんと、お前絶対、日本人じゃないな」
そう言いながらも彼も確かに笑っていたから、Lは安心してもっと笑った。
戻ってきたワタリに、真紀は片手でオッケーサインを作った。
それを見てあからさまに安堵した彼に眉を寄せる。
「ちょっと、信用してなかったの?」
「し難い作戦でしたもので」
「いーじゃないの。万事解決結果オーライ。鍵、どうも」
ピン、とはねて返したそれを受け取ってワタリは丁重に頭を下げた。
「顛末はどうなりましたか」
「月君が男前だったかな・・・一つ聞きたいんだけど」
「はい」
編集していたのか見直していたのか、スクリーンに映った子供のようなあどけない寝顔のLをこつこつ叩きながら真紀は苦笑して聞いた。
「彼、何歳?」
「――25才になられたと記憶しています」
「・・・・・・・・・・・・こんな25、ヤだわ、私」
肩をすくめてつぶやいた彼女に、ワタリは微笑して返した。
作品名:For one Reason 作家名:亜沙木