二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

For one Reason

INDEX|4ページ/31ページ|

次のページ前のページ
 

Phase2.始動



 カタカタカタ。
 キーボードの音が響く。
『よかったのかい?』
「何が?」
 振り向いた先にはグロテスクと形象するのが最適な存在がいた。今は座り込んで、林檎を消費している。
 遠藤真紀に憑いている、死神だった。
『ああも真正面から宣戦布告をしてさ』
「大丈夫よ、夜神月はノートの力に囚われている。ノート以外の方法で私を殺すなんて、しようとしないはず」
 殺されはしないわよ、と言って真紀はリターンキーを押す。
『お前は、どっちの味方なんだい』
「どっちも」
 答えて、彼女は保存をするとパソコンの電源を落とす。
『どっちも?』
「そうよ、私は中立の立場で遊ぶだけ。Lに近づいたのも月に近づいたのも、たった一つの理由にあるわ」
 わかってるでしょうドット、と軽やかな笑い声に死神ドットは彼女の机の上に放置されているノートを見た。
 二年前に渡してから、彼女はあることをした以外、一切そのノートを使う気配がなかった。その理由を尋ねてみると、あまりに彼女らしい答えが返ってきた。
――だってどの人生にも楽しさはあるわ。楽しみを生む私が、楽しみを消してどうするの。
「さ、ニュースでもみましょうか、ドット」
 テレビをつけた。
 そのとき、だった。
『罪の無い人は殺したく無い、悪を憎み正義を愛している。
 警察も敵では無く、味方だと考えている・・・』
「!」
 真紀の手がリモコンを操り、音量を上げる。
 その内容を食い入るように見ていた彼女は、桜テレビからの生中継が入ったとたんに立ち上がった。
「やられた」
 画面にあるのはKIRAの文字。テープ特有の雑音に、汚い画像。
 死んだのは、刑事だろう。
「目を持つ、第二のキラ・・・!」
 夜神月だけでは、なかったのだ。
 ここに、もう一人のキラがいる。
「ドット」
『なんだい』
 林檎を租借していたドットは、真紀の言葉を聞く前に首を振る。
『知らないよ、誰がいるかなんて。リュークは特別だ、あいつは有名だ』
「――・・・では、探させましょう」
 第一のキラに。
 夜神月に。


 Lは奥歯を噛み締めた。
 やられた。
 被害者を、出してしまった。しかも、捜査本部から。
 キラは夜神月だと思う、直感かもしれない、だけど。
(・・・今日、でしたか)
 カレンダーを見て嘆息した。よりによって、今日。
 相手は何か知っているのだろうか。
「ワタリ、車を」
「はい」
 車に乗って、指定された店へと行った。甘味が好きだといったら、じゃあここがいいわねと指定された店だった。
 降りて、中へと入っていく。見回すまでもなく、ウィンドウの外からその姿は確認できる。正面に座ると、お久しぶりと言ってきた。
「忙しいときにごめんね」
「・・・いえ」
 遠藤真紀。
 調べた結果、不審な部分は何もない、ごく普通の女性。
 その彼女は言った、取引をしない?と。
「教えてくれるんじゃないんですか」
「ええ、教えるわ。その前に注文をしましょう。ケーキは好き?」
「好きです」
「甘いもの全般いける口?」
「はい」
 頷いたLにそれはよかったと言って、軽く手をあげるとオーダーをする。何を注文したのかは聞き取れなかったが、おそらくケーキの何かだろう。
「教えてください。貴女の知っていることを」
「・・・必要なものは、顔と名前」
「知ってます」
 きっぱりと返したLに真紀は笑う。
「心臓発作以外でも殺せる」
「・・・知ってます」
「死ぬ時間も操れる」
「知ってます」
 じゃあこれは知らないわね、と彼女は両手を重ねて微笑んだ。
「夜神月は、キラよ」
「!」
 運ばれてきたケーキにフォークを突き刺して、Lはカッと目を開く。
 とてもひそめられた声だったけれど、それはとてもよく聞こえてしまった。
「なんで、すって」
「違うと思っていた?」
「・・・貴女の、断言が気に入りません」
 ぼそとつぶやいたLに真紀は笑みを深くした。
「相手は貴方がLなのを知ってるでしょう。アドバンテージをイーブンにしただけ」
「どうやって断言したの、ですか」
 クスリ。
 笑った彼女は、自分のケーキを食べ終える。
「さあ、どうしてかしらね」
「はぐらかさないでください」
「知っていることを「全部」教えるなんて言ってないわ」
「・・・貴女を、監禁してもいいんだ」
「してみればいいじゃない」
 両手を返してLへ向けて、真紀は声を立てて笑った。とても、楽しそうに。
 ・・・そう、彼女の監禁は不可能だ。何も罪状がない。いきなり引っ張れば彼女の親が訴える、かといってキラ容疑で引っ張れば――本物のキラの得にしかならない。
「お願いは一つよ、L」
「何ですか」
「私は今、夜神月の弱みを握っている。そして、Lのも欲しい」
 言わんとしていることがわかったLはその前髪の後ろから真紀を見る。
 凡庸な女。
 その印象を、変えなくてはいけない。
「捜査本部に私を加えなさい」
「・・・・・・真紀さんは、どうして首を突っ込むんですか。貴女は無関係のはずだ」
 いや、キラのことを何か知っている時点で無関係ではない。それはわかっていた。だが、彼女を引き込むことにはかなりのためらいがあった。彼女が、キラと結びついているのかもしれないのだ。
 けれど、もしこちら側につかせることができたら。
 何より有能な、スパイに、なる。
「L、今年とは言わないわ。来年までに欲しいのよね、だから」
 彼女は不思議なことを言った。来年までにとは、何のことだろうか。
 その目はかなり切羽詰っている――来年までに欲するもののために、キラとL、両者に接触した――どちらにも殺される可能性があったのに。
「何が欲しいんですか」
「知りたくないわよ」
 有無を言わさぬ笑みに、Lは黙することを選んだ。
 だが後に――Lは知るのだ。そして、その言葉の意味に納得し深く感謝することとなる。


 捜査本部に呼ばれた月は、帰る時Lに思わぬ言葉を言われた。
「遅くなってしまいました。危ないので、一人捜査官をお付けします」
「かまわないよ、そんなの」
 断ろうとしたが、すっと横からスーツの人物が出てきて、月は目を見張る。
「こんにちは、夜神君」
 紅を引いた唇が弧を描く。
 無言でその女性捜査官に連れられて、月は捜査本部を出る。
「・・・・・・何のまねをしている」
「潜入?」
 くすくすと真紀は声を漏らす。明らかに笑っていた。
 もとよりさまざまな意味で不機嫌だった月は、それでさらにムッとしたがかろうじて自分の感情を表に出すのは防ぐ。
「コウモリのつもりか」
「ふふ、思い上がるんじゃないわ。第二のキラ――アレは相当まずい。放っておけば、貴方も終わり」
「・・・誰か知っているのか」
「知らないわ」
 返して、真紀は立ち止まった。月を見上げて、目を細める。
 それが猫のようなしぐさで、月は口元を引き締める。
「楽しいわ、夜神月」
「――何がだ」
「完ぺき主義の貴方がぼろを出すのが、楽しいわ。解けぬ謎がないLが解けきれないのも、楽しい」
作品名:For one Reason 作家名:亜沙木