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ぼくがせかいにのぞむこと、

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意地が悪いね、と仁が頬を薔薇色に染めた。やっぱり僕はゆらゆらと首を傾げることしか出来なくて、空から降ってきた言葉に、はっとして顔を曇らせた。時間が、少し足りないみたい。言いたいことが次から次へ溢れ出るのを必死で堪えて、もっとも伝えたいことを思い浮かべてみた。僕は、君の笑顔を、守っていたかったんだよ、と。瞳の端から零れだしそうな涙をそっとたえる。
「仁、どうか、君が幸せであることを願うよ」
「・・・光也と似たようなことを言う、」
そこまで言った仁の口を僕は無理やりに塞いだ。降る言葉は容赦なくまるで彗星か何かのように空間を切り裂いて光を零す。
「出来れば、僕ももう一度、君と同じ時代を過ごしたかった」
「よしみ、」
「さよなら」

別れの流星群、いよいよ言葉は柔らかい陽だまりとなって仁を包み込んだ。仁が切なげに伸ばした腕を、僕は最後まで掴むことなど出来なくて、ひらひらと指をきっちりそろえて手を振った。


( めをつぶるからかくしておいで / 慶光と仁 )




のこのことまるでこの時代に溶け込んで歩いているのが信じられなくて、きっと慶もあの時代から見たらこんな感じだったのかなって漠然と思った。やっぱり彼は見目が良いらしく、すれ違う幾人物女性が嬉々として彼の顔を覗き込んでいた。浜辺近くの防波堤に腰掛ける彼を、かもめだけが呼び止める。カキ氷を持って戻ってきた生方が、俺の顔を覗き込んで訝しげに眉を顰めた。
「光也さん・・・?」
声を掛けられてはっとした俺は慌てて涙の筋を拭い取った。差し出された黄色いそれをしっかりと受け取ってから、他人の空似だと思いつつも思いたくなくて、どうしてこんなに居た堪れない気持ちになるのか遣る瀬無い気持ちになるのか思いは止められそうになかった。溶けないうちにと口に一口放り込んだ氷は思った以上に温かった。
「なあ、生まれ変わりって信じるか?」
「貴方は・・・本当に面白いことばかりいいますね」
なあ、奇跡って信じちゃいけない? 生まれ変わりって信じちゃいけない? 俺って一体いつからそんなに傲慢な人間になったの? って子供っぽく笑った俺を、生方は一度も否定しなかった。
「そういう類のことはですね、思った本人が夢だって肯定したらお終いなんです。貴方が今、一番望んでいるものはなんですか?」
彼はゆっくりと立ち上がると、かもめに手を振ってからこちらに浜辺を歩き出した。その赤毛は、潮風に吹かれてふわふわとまるで綿毛のようだと、あとでしっかり洗わないときっと塩臭いぞ、と声を掛けたくて仕方が無かった。でも、そんな夢のような話。ああ、もうくそったれ! と俺の中で何かが跳ねた。
「大きな声を出さなきゃなあ、幸せには、なれない、ん、だよっ!」
「光也さん!?」
受け取ったばかりの黄色をすぐに生方に突き返すと俺は自身が出来うる限りの最速で浜辺を走った。懐かしい背中を取り戻すために。俺は、格好悪いけど、精一杯の大声で、いとおしい彼の名を叫んだ。

「仁っ!」

やっと会えた、と仁は慈しむように微笑んだ。それが何よりも彼が幸福であった印であると。


( きづかないふりをしてあげよう / 光也と仁 )