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風と花と二十三の私と

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聖域で、教皇の正体を知り、それでいて彼に従っているのは俺ひとりだけだ。事態をほぼ正確に把握しているだろう奴は他にも二人いる。老師とムウ。前教皇シオンは老師の親友で、ムウの師であったそうだから、仕方のない話だ。だれだって自分の大切な人間が赤の他人と入れ替わっていたら、すぐに気が付く。最初に異変を感知したのはムウなのだろう。奴は、サガがシオンを殺害した直後にジャミールへ出奔し、今の今まで聖域の地を踏んでいない。ジャミールから中国まではそんなに遠くないことだし、ムウにはお得意のテレポーションもあるし、五老峰の大滝の前で座したままの老師も、ご親友の身に何があったのかくらいムウから聞いているだろう。あるいは、聞くまでもなかったかもしれない。あの化け物のことだ、星を読んで人の生死を卜するくらい造作なくやってのけるに違いない。
 二人は、気持ち悪いくらい静かに生きている。仇の見当はついているだろうに、その仇に、師の、あるいは友の死を贖わせることをせず、ただ黙している。それもそうだ、確たる証左もなく教皇が偽者だなんて騒いだら、状況が悪化するだけだ。すべての聖闘士を巻き込んだ内乱が始まる可能性もある。そんなことになりでもしたら、大多数の聖闘士が、地上の平和を護るのとは関係のない低次元の争いで犬死にしてしまう。まったく、馬鹿馬鹿しい。


 他にも、教皇を怪しんでいる奴はいる。まずアルデバラン。あいつはのんびりしているようで、他人をよく見ている。お陰で、現教皇様の立ち居振る舞いにけっこうな違和感を覚えているのだとか。この話は確かだ、たまの召集の際、ギリシアで偶然鉢合わせたとき、俺のところに遊びにきた本人が零してたから。奴が俺のところに来るのに深い意味はない。たまには立場の同じような奴と飲み明かして愚痴のひとつやふたつ言ってみたい日だってあるんだろう。もちろん、俺にだってある。そんなとき俺は宮に隣接している住居で、人の好い後輩を歓待してやっている。宮内で酒盛りできたら風流なんだがな。さすがに俺の宮は、壁一面のオブジェのせいで、まともな神経の奴は長居できない。つまりマトモじゃない奴なら平気な訳で、シャカなんかは一日中だって俺の宮内でチャイでも飲みつづけられるのだろうが、さしもの俺もそれには付き合いきれそうにない。
 ミロとカミュは、疑念を持ってはいるのだろうが、何せミロは物事を深く考えない性質だし、カミュは東シベリアで後進の育成に励みっぱなしでこちらの情勢に疎いし、決定的な疑惑には至っていない。それでも、アイオリアよりはましだ。アイオリアの奴は、アイオロス兄貴が逆賊として処断されてから、自分がご立派な聖闘士となって兄貴の分まで女神に忠誠を誓わねば、との妄念に取り憑かれてしまった。視界が狭まっているせいか、物事の本質がまったく見えてない。女神なんて実際は居やしないのに。
作品名:風と花と二十三の私と 作家名:まさω