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みとなんこ@紺
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Doubt

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2.







ちょうど腹も減ってきたので、目に付いた適当なパブに潜り込んでみる。カウンター主体の、本当に飲むだけ、がメインの店だが、頼んだつまみは悪くない。ぬるい酒も味自体は結構いける。
仕事上がりらしい男達に混じって酒を飲んでいれば、どうも飲みっぷりを気に入られたらしい。半ば出来上がっている男達に声を掛けられた。
「ここらじゃ見ねぇ顔だなぁ。旅行か?こーんなつまんねー町に何しに来たんだよ」
店に入った時から何か見てるなぁとは思ったが、ただ余所者が珍しいだけかもしれない。まぁパブ自体、町の者くらいしか近寄りそうにない構えの所を選んだので、ある意味ビンゴだ。こういった店の方が町の事について聞きやすいものだから。
常連なのだろう、わらわらと寄ってきては人の皿からつまみを攫っていったりされているが、とりあえず気にしない方向で。
「あるもんといや、山くらいっしかねーもんな。もっと南のユースウェルくれーの量が出りゃ炭坑としても良い感じなんだがな」
「お陰で仕事も少ねぇったらねぇぜ。木切ったトコでたかが知れてるしな。なぁ、兄ちゃん、いい話持ってねぇのか?」
「持ってるわけねぇって。オレはちょっとお使い頼まれちまってさ」
「お使い~?」
「ちょっと人捜しに来たんだよ。・・・最近ここらでさ、ちょっといかにも都会から来ましたーみたいな、小綺麗な身なりの、黒髪の若い男見かけなかったか?」
ちょうど良い、と問い掛ければ、男達は一様に顔を見合わせた。
「この町は街道沿いの通過点だから、わりと知らない奴の出入りは多いんだ。それだけじゃなぁ」
ただその中の男の一人が待てよ、と僅かに首を傾げた。
「…軟派な感じの?」
「そう、いかにも女にうけそうな」
いかん、主観が入った。
だが、それを聞いた男は、ここら辺は黒髪ってそんなにいないんだが、と続けた。
「確かそんな奴探してるのがいたぜ」
「…何だって?」
「ちょっと前に同じ事聞かれたよ」
「兄ちゃん、そいつがどーかしたのかぁ?」
ああもう酔っ払いの相手してる場合じゃないのに!
「やー、ちょい頼まれごとでさ。そいつつれて帰んないと大変なんだよ」(主にオレが)
「女かー?」
「女絡みか!そいつに女房でもさらわれたか?」
「んなわけねーだろ!」
「判ってる判ってる。何か女に苦労してそうな顔してるもんな、あんた!」

デカイ世話だ。

てゆーか女に苦労してそうな顔ってどんななんだ。
アハハハ!と笑い飛ばされバシバシと遠慮なく背を叩かれながら、ちょっと遠くを見てしまった。何か今日はおっさんに叩かれてばっかりだ。
しかも何が悲しくて酔っぱらい共に慰められなきゃならないのか。
が。
走馬灯のように甦るこれまでのあれやこれや。
そういえば、気になるパン屋の可愛いあの子も惣菜屋の美人なあの子も、出入りの皆の憧れのあの子まで。
全部持ってかれてねぇか・・・!?
というか、女は何故二言目には「大佐」なんだ。
(ちなみに彼の人の名誉のために言っておくが、別にモーションかけたわけでも何でもなく、彼女らが勝手に夢見ているだけなのだが、そういった注目を浴びるだけでも嫉ましいというちょっと複雑な男心である)
「・・・納得いかねぇ・・・!」
「お、やっぱりか?ままま、今日はやな事忘れて景気良く一杯やれよ」
「マスター!このにーちゃんにもう一杯!」
「やってられっかー!」
ジョッキを一気に煽ると、ををー!!と周りが一斉に沸いた。



そうこうしつつ、寂しい男ども同士親交を深めまくってぐだぐだしているうちに、店を出た頃にはとっぷり陽は暮れてしまっていた。
思いのほか酒量はすすんでしまった気もするが、気の良い山男たちに結局奢ってもらったことだし。場のノリとは恐ろしい。そんな、すっかり意気投合してしまった酔った男達から聞く町の噂話は興味深くもあるが、取り留めないものだった。

曰く、
「何でも町の近くで金が見つかったらしい」
「え、宝石が出たんだろ?だから中央から越してきたんだって聞いたぞ」
「スタンレーさんは親父さんか誰かがこの町の出で、最近帰ってきたんじゃなかったか?」
「ちょっと前に放蕩息子が帰ってきたって聞いたぜ?」
「それってモルガンの旦那のトコじゃないか?」

・・・ええと。

訂正。取り留めないどころでなかった。連想ゲームばりである。つまるところ、なにやら町は色々な噂で持ちきりらしい。
こっちを完全そっちのけで、あーでもない、こーでもないとやり出した男達を取りあえず止めないままに、ハボックは話に耳を傾けつつジョッキを口に運びながら、ずっと聞き側に回っていた。
アルコールも入って微妙に回転の鈍っている頭の隅で手に入れた情報を思い返しつつ一つ息を付く。
元々こういう断片的な情報を整理するのは苦手なのだ。
こんな感じのお役目は、今、司令部で情報集めに駆り出されてるであろうブレダに良く回っていたなと他人事のように思い返す。
・・・そういえば、司令部のほうでは何か進展はあっただろうか。宿の方に連絡が入っていればいいが。



通りを宿に向かって歩いていけば、これから一杯引っ掛けに行くのか帰るのか、酒場で屯っていたような労働者風の風体の男たちとよくすれ違った。女子供はもう家に引っ込んでいるのか、姿は見えない。確かに、夜もそれなりに明るいイーストシティなんかの中核都市以上でないとこの時間帯に出歩く事は難しそうだが。
悲しいかな、ある程度の人の集まる場所に巣くう暗部というものはそう簡単になくなりはしない。
均等な間隔で燈る明かりに通りがぼんやりと照らされている。街灯の間隔はかなり開いているが、通りに面して並び建つ家々の窓から漏れる明かりで結構見通しは良かった。ただおそらくそれもこの時間帯だけだ。もう少しすれば明かりは落とされ、薄ぼんやりとした光は余計に物や人の判別を難しくする。
こんな中だと、数人の男が歩いていてもあまり目立たなかっただろう。例えその中にただ一人、周りのメンツにそぐわぬ男が混じっていても、きっと誰も気にしない。

しかし到着してからこっち思っていたことだが、あくまでも町も、人の様子もこれといって普通だった。
何かしらの問題を抱えている場所独特の緊迫感や、漠然とした不安感なんかの不穏な空気が感じられない。
それは良いことではあるのだが、今回に関してはちょっとよろしくない。それは手がかりになるものがない、という事と同義だからだ。
結局今日仕入れたネタにめぼしいものはなく、今現在掴んでいる事の裏付けだけで終わってしまった。
「ほーんと、何やってんですか、あんた」
2日も行方眩まして。
普段からフラフラと、気が付いた時には消えてたりする上司だが、日付を跨いでまで消えていた事はない。(当たり前だ。そんな事をしようものなら、確実に鷹の目に獲られる)今回は本人的にもイレギュラーな事態ではあるだろうが、それでも自分の休暇が3日の予定だという事は判っているだろうから、いい加減そろそろアクションを起こしてくれるんではないだろうか。
まぁ出来たら向こうが暴れる前にある程度近付いておかなければ、ご帰還の際に何言われるかが怖いので、さっさと追い掛けなければならないだろうが。
結局、勝負は明日に持ち越しである。





作品名:Doubt 作家名:みとなんこ@紺