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ひぐらしのなく頃に 壊 姉探し編

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第一話





22年前の昭和58年6月、雛見沢にて発生した火山性ガスで雛見沢村の村民全員が死亡した「雛見沢大災害」。


一夜にして2000人近くの人間の命を奪った災害に対して、私は恨みを持つことはない。災害なんて、存在しない・触れられないものに対して恨みという感情を持つことはとてもおかしいことだ。
だから、私はこの災害で母と姉を亡くしたとしても、この自然災害を恨むことはないだろう。


それが「自然」災害であるならば。



私達は今、雛見沢の地に立っている。達といってもそこにいるのは私と、私の父さんだけだが。


「杏菜・・・なにか聞こえるかい?」


父さんは私の顔色を窺うように訊ねてきた。こういう訊ね方をした時、大抵父さんは私に世間的によからぬ答えを期待していない。なぜなら、父さんは怖いもの、例えばホラー映画なんてものが嫌いだからだ。






「まだ何も・・・・聞こえないし、見えないし、感じないわ。まだ入り口だし・・・・村の奥へ行けば何か感じるかもしれない。」


そう言って私はたじろぐ父さんをせかした。怖いものが嫌いと言ったって、父さんはこの地に来たくない訳ではなかった・・・自分の妻、私の母さんが亡くなった原因の一端がこの地に隠されているかもしれないと知ったら、行くことを考えるだろう。ただこの地は何年も封鎖され、その内亡霊が出るなんて噂すら飛び交っているものだから、父さんはここに来ることをためらったのだ。怖いもの嫌いの父さんがここに来れただけで、あるいは称賛に値するものなのかもしれない。


『もしかすると、姉さんの霊がいるかもしれないわよ。』


私がそんなことを言ってしまったから、来たがらなかったのかもしれないが。


「でも・・・なんだって杏菜は雛見沢に行きたいと思ったんだい?」


怖さを紛らわすためなのだろうか、父さんがまたしても質問してきた。


「まだ話してなかったっけ?」


「うん、何年も前から行きたいとは聞いていたけど、理由までは聞いてなかったから。俺は行きたいって思ってたから杏菜もそうなんだなって対して考えてなかったけど、鈴子が死んだのは杏菜がすごく小さい時だったし、あんまり覚えてないんじゃないかって。」


なんだ、そんなことか。そんなの・・・。


「私は母さんが死ぬところはすごく明確に覚えてるわよ?」


「そうなのか・・・?」


「ええ、最初にお母さんが狂い始めたのもすごく覚えてる。昭和58年6月の26日くらいだわ。その日のニュースを見てからお母さんは狂った。」


「・・・・・・。」


「それにね、私の近くにね、姉さんがいる気がするのよ、その頃から。」


「え?」


「姉さんは枕元でいつも私を見下ろしてた。何かを伝えたいような、伝えたくないような。そんな意図だったと思う。私は霊感がそこまで強くなかったから確信は出来なかったけど、多分あれは姉さんだった。」


「杏菜・・・?」


「多分生きている肉親に、この災害の謎を解いてくれって、そういう意味だったんじゃないかな。今日は、それを確かめるために来たの。」


そう、私の後ろには常に姉さんの気配がついて回っていた。
最初は何の気配か理解出来なかった。けれど時が経つにつれ、雛見沢大災害の不明瞭さも相まって、この私の後ろをついてくる気配は姉さんだと思ってきたんだ。私は20年もの間、姉さんの気配につきまとわれて生きてきた。執拗な気配は私をただひたすらに雛見沢に行くように囁いていたような気がした。