帽子
千景がイヤだと首を振る
「だってさぁ。俺今日はあんま時間ねーもん。」
「はぁ?!」
「後30分くれぇしたら帰んなきゃなんねぇし。」
「聞いてないぞ?!」
「言ってねぇし。」
だからさぁ
と
千景がヤんならさっさとしようぜ?と
門田の服を脱がせにかかり
慌てた門田がそれを阻止する
「お前!手当が先だろうが?!」
「何言ってんだよ。ヤんのが先だろ?」
「つか。ヤるとか言ってねぇぞ俺は!!」
「俺は最初から言ってたもん。いつもの事っしょ?」
「止めろ馬鹿!」
くんずほぐれつするうち
いつの間にか千景の吸い付くキスに門田が答え
そのうち
手足を絡めて上へ下へ
どっちが主導権を握るかでせめぎあいになるのは
いつもの事だが
『今日は止めとけ』
な?
と
諭すように滅多に無い優しい微笑みで言った門田に
千景が思わず手を止める
『興奮すっとまた出血すんだろ?』
と
苦笑して言う男が
本気で自分の事を心配しているのが解って
それで
何とも言えず
いい気持ちになる
じゃあ
今日は俺ヤんねぇし
京平ヤっていいからさぁと
未だかつてまだ自分が上になった事も無いくせに言う
年下の一応自称恋人を
門田が心底困った顔で見る
な?ヤってよ
俺このままじゃ身体火照って帰れねーもん
と
強請るようににっとする顔は
そんな時だけ酷く幼い笑顔で
困る
結局
年下の恋人の願いを
聞き届けてやって
30分しか無いと言うのに
ちょっとだけ
ちょっとだけだから
寝かせろ
と
自分の腕枕でスウと寝息を立てる寝顔を
門田は見た
女にもてるのも解る
整った顔
だが
こんな時だけ
本当に酷く幼くて可愛い顔で眠るから
本気で
困るのだ
「・・・しょうのねぇ。」
困ってしまう顔を
少しでも見ないように
門田はそっと片方の腕を伸ばして
転がっていた千景の帽子を取り
その寝顔を隠すようにそっと顔の上へ置き
自分も
少しばかり
赤くなった顔を隠す為
落ちていたキャップを引き寄せて
顔の上へ
ポイ
と
乗せた