偲ぶ銀の
そう、君は大切なものを守ったんだろう。
あの子を守ることが出来るなら、きっと何と引き換えにしても惜しくはなかったのだとわかる。
――――たとえそれが自分自身だとしても。
◆ ◆ ◆
(…けれど、シリウス。やっぱり君は勝手だ)
人狼の私を初めて認めてくれた3人。
その全てを失って、私が平気でいられると思ったのか―――?
「いつか再び会ったら、覚悟しといてね……二人とも」
きっと今も傍で見てくれている彼らが、普段は沸点の高い私がキレることを何よりも恐れていたことを思い出し、くすりと小さく笑う。
ぎこちなく強張って、震えそうになったが私は笑った。
―――本当に。
体を守っても、心をこんなにも辛くさせて、どうしろというのだろう。
ハリーだって、君がどれほど大事だったか。…君との生活をどれほど心待ちにしていたか、わかっていたのだろうか。
……いや、楽しみにしていたのだと、私は知っていた。
それは叶うことがなかった、切なる願いだったから。
そして、無理に作った笑いが消える頃には、私の胸には静かな決意だけがあった。
「私はもう―――何も奪われるつもりはない」
もう、この手に残されたものはほとんどないけれど。
「守ってみせる。…君たちが残してくれたものを」
冴え冴えとした三日月が、漆黒の中天を飾る。
更なる波乱の予感と、ひりついた緊張の空気が夜の街を充たしている。
リーマスは自らの意志を確認するように、ぎゅっと自分の手を握り締めた。
END
07.12.14
作品名:偲ぶ銀の 作家名:加賀屋 藍(※撤退予定)