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お前と俺とで遭難しました。西普編

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腕の中、不安げに顔を上げたプロイセンの赤と目が合う。それに、スペインは首を振った。
(…あかん。子どもに手出したら、あかんやろ!バチカンに知られたら処刑されるわ!)
顔見知りの厳格な爺様の顔を思い出し、スペインはべりっとプロイセンを自分から剥がした。
「怖くて、寂しかったやろ。親分がちゃんとバチカンまで送ったるからな!」
「おう。ありがとうな!」
にこっと信頼し、安心しきった顔をして笑い返したプロイセンに胸がちくりと痛み、きゅんとなる。
(…あー、ウチのロマーノもこれくらい素直やったら、可愛ええのにな)
スペインは心の中、溜息を吐いた。








 イタリアまで、プロイセンを送る航海は思いのほか、楽しいものとなった。

 プロイセンの容姿の異端さに、初めはいい顔をせず、腫れ物扱いな船員達だったが、プロイセンはそれに慣れているのか飄々としていてた。何かを自分が言っても無駄だろう。スペインはプロイセンに居心地の悪い思いをさせているのではないかと思い、ひとりでいるプロイセンに声をかけた。
「悪いなあ」
「別に。慣れてるし」
事も無げにプロイセンはそう言い、海を眺め、美しい声で神へ捧げる歌を歌う。人を寄せ付け難い見かけに寄らず人懐っこく口も達者なプロイセンは気が付くと船員達に早々に馴染んで、甲板の上で船員たちと談笑したり、賭け事に加わったりと意気投合したようだ。そして、航海中、二度程、海賊に襲われたが武勲を一番に上げたのはプロイセンだった。それで一気に船員たちの信頼と尊敬をプロイセンは得た。

「お前、俺の子分になれへん?」

航海中、何度、そう口説いたことか解らない。プロイセンの返事はいつもつれないものだった。

「お前の子分になったら、馬に乗れねぇじゃん。海も悪くはないけどよ。俺、馬に乗るほうが好き」

子どもらしい理由で素っ気無くそう返されては諦めるしかない。無理矢理、自分のものにしても良かったのだが、年端のいかない子どもに手を出すのはやはり気が引けた。命の恩人でもある相手にそうそう無体も働けない。…スペインが悶々と自分の中の欲を抑えて理性と戦ううちに、船はローマ近郊の港に到着した。

「ありがとな。送ってくれて」

岸壁に船が付けられ、板が渡される。甲板の上、プロイセンは視線の高いスペインを見上げた。
「かまへんよ。俺も楽しかったわ。…なあ、」
諦めなければと思うが、この自分を見つめる赤が欲しいと思う。スペインはプロイセンを見つめた。
「何だよ?」
「ほんまに子分にならへん?」
スペインの言葉にプロイセンは首を振った。
「俺、ちゃんとした国になるのが夢なんだ。だから、お前の子分にはなれねぇ」
きっぱりとそう言われ、スペインは息を吐いた。
「…そっか。親分、フラれてもうたなぁ」
それにプロイセンは困った顔をして、一瞬、眉を寄せると子どもらしい邪気のない笑みを浮かべた。
「いつか、俺が国になれたら、友達になろうぜ!」
そう言って笑ったプロイセンにスペインは苦笑を返した。
「それ、いつになるんやろか?」
「…むう」
口を尖らせたプロイセンの頬をスペインは突く。
「ま、楽しみにしとるわ」
「お前より、絶対、超大国になってやるからな!!」
拗ねたようにそう言ったプロイセンは背伸びをすると、スペインの首に巻かれたスカーフをぐいっと引き寄せた。

「またな、スペイン!」

頬に柔らかな唇の感触。それに、スペインは目を見開く。スペインの驚いた顔に悪戯っぽく笑ったプロイセン。翻る黒いケープ。スペインの伸ばした手のひらは空を掴む。そのまま、振り返ることなく港に迎えに来ていた同郷の者の待つ所へ、プロイセンが駆け出していくのをスペインは見送る。

「…あかん。本気で惚れてしまいそうや…」

頬を押さえ、空を見上げたスペインは呟く。その呟きは海風に掻き消され、耳まで赤くなったスペインの頬をその風はやさしく撫でるのだった。






おわり