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葛原ほずみ
葛原ほずみ
novelistID. 10543
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一緒に帰ろう。(サンプル)

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「おう、久しぶりだな」
 振り向くと、そこにいたのは正邦の岩村だった。彼も関東一部常連の強豪大学でバスケを続けている。
「ああ……! お久しぶりです。よく覚えてましたね」
 岩村は隣に腰を下ろしながら当たり前だ、と答えた。
「そりゃ覚えてるさ。正邦がIH出場を逃したあの試合は忘れられねぇし、日向とはよくあたるしな。奴もよく頑張ってるよ、普通科でしかも教職取るんで授業もかっちり出てるんだって?」
「らしいですね」
「よくそれでAチームに居続けられるなってうちの春日も感心してたぞ」
 自分が褒められたように少し嬉しくなり、ありがとうございます、と言おうとしたが、伊月が口にするよりも少しだけ早く、岩村がその先を言った。
「まあ、体調管理はあの子がしっかりしてるから大丈夫だろうがな」
「え?」
 あの子、と言われて伊月は眉を寄せる。学校側がちゃんとしているとかいうのならまだわかるが、あの子というのは何の話だ。
「ああ、ほらあのマネージャー」
 岩村に指差されて伊月もそちらを見る。と、ストレッチをする日向と、それを手伝って背中を押している例のマネージャーの姿があった。
「伊月は話聞いてないのか? 去年入部してからずっと、もう日向専属みたいな感じですっかり周りにも公認だって聞くが」
 ――専属? 公認……? なんだそれ。知らない。聞いてない。
「……いや、部の話は、オレがやめちゃったんであまり」
「ああそうか。やめるとやっぱりそうそう会わなくなるもんな」
「――ですね」
 二人が一緒の大学に進み一緒に住んでいることは、一部の仲のいい人間しか知らない。岩村が知らなくて当然だ。
 岩村が日向に再び視線をやった。伊月も釣られて再びそちらを見る。
 ストレッチの手伝いで背中や足を押してもらうことはよくあるが、体格差の関係で選手同士でやるのが殆どだ。女子にというなら高校時代、伊月もカントクにやってもらったというかやられたことはある。だがそれはカントクがトレーナーとしても優秀だったからだ。あのマネージャーは手伝っている様子を見ても、手馴れてはいるが、よく大学バスケ部にいる学生トレーナーなどではないのは一目瞭然だ。
 ――日向とあの子じゃ体格差がありすぎて、力が足りないんじゃないのか? あんな小さい女子にさせるぐらいならベンチにいる控えの下級生にさせた方がいいだろ。
 部内でのことだ、オレの日向に触るななんてことは言わない。言わないけど、岩村の言葉と彼女の態度と、彼女である必然性のなさからそんな気持ちがふつふつと湧き上がった。
 一通りストレッチをした日向は彼女から飲み物を受け取って、口にしながら何か楽しげに話している。彼女が何か冗談でも言ったのか、日向が笑いながら頭を軽く叩き、そのままぐしゃぐしゃと頭を撫でた。彼女は唇を尖らせて何か言いながら乱された短い髪を手櫛で整える。
 ――なんだよ、あれ……
 正直、全く知らない他校の選手がやっていたのなら、あの二人付き合っているんだろうなと思うような雰囲気に見えた。そもそも密着することも多いストレッチの手伝いを女子マネがしている時点でそう勘繰られても仕方ない。特定の選手を贔屓にしていれば他の女子マネや先輩に注意されそうなものだが、それも全くない。公認だというのもあながち風評ではないのかもしれない。
 ――日向専属みたいな、って。
 他校の岩村まで知っているぐらいカップル扱いされていて、なのに日向は避けるでもなくされるがままでいる。まるで、噂を否定する気がないかのように。
 ――まさか。日向は女子に優しいからカントクのときみたいに周りが誤解してるだけだろ。
 伊月は、しょうがないな、日向かっこいいからな、と苦笑しようとする。が、唇の端は強張ったまま動かず、逆にすーっと血が下がっていくような感覚を覚える。隣でそんな伊月の様子に全く気付かず、岩村が続けた。
「日向はてっきりお前のところのあのカントクとなのかと思ってたけどな。実際どうだったんだ? 高校の頃デキてたわけじゃないのか?」
「あ、いえ、カントクはまあ、何ていうか……女子っていうよりも同志っていうカンジで」
「なるほどな」
 納得したように岩村が頷く。
 コートでは3Qが始まるところだ。日向も引き続き出るようで、ベンチから皆が選手たちに檄を飛ばす中、彼女がガッツポーズで何か声をかけ、日向がそれに軽く手を上げて応えた。
「いつものことながら、仲いいな」
 岩村が苦笑を漏らす。
 いつものこと。いつもこうなのか。自分が試合を見に来られなかったこの一年、ずっとこうだったのか。
 ――なんだ、あれ。何だアレ。
 伊月はぎゅ、と唇を噛んで立ち上がった。
「……すみません、試合まだ終わってないですけど用事あるんで」