二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
葛原ほずみ
葛原ほずみ
novelistID. 10543
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

一緒に帰ろう。(サンプル)

INDEX|2ページ/3ページ|

次のページ前のページ
 

 あの二人なら伊月と日向の関係を知っているし、水戸部は理系コースでクラスが一緒だ。お互いに調査票を見せ合ったこともある。そして水戸部から小金井に伝わっていても不思議はないし、小金井がそれを日向に教えるのも想像が容易い。
「さあね」
「同じ部のダチに教えてもらうのに主将のツテもなにもないだろ」
 ツッコミを入れると日向はまたゲンコツで頭をグリグリとする。
「いてて」
「うるせーな、オレの深遠かつ長期的な計画の末に今があるんだ、少しは感謝しろ」
 ふん、と偉そうな口調で言われて伊月は苦笑した。
「オマエほんと、ばかだろ」
「オマエはほんとに、天邪鬼すぎるんだよ。嬉しいくせに、たまには素直になれよなー」
 ぼやく日向に、伊月は胸にうずめていた顔を起こし、上から日向の顔を覗き込み、幸せいっぱいな笑みを浮かべて言う。
「サンキュ……大好きだ」
 途端に日向に頭を引き寄せられ、乱暴に唇を奪われた。
「……ふ…っ」
 再びそのまま口付けに夢中になりかけた時。
「景気いいからケーキ買ってきたわよー、取りに来て」
 部屋の外からかけられた母の声に、はじかれたように身を離す。帰ってきていたのに全く気付いていなかった。危険すぎる。
「ああもう、母さん……」
「な、こーゆー時ただ声かけられるんじゃなくてダジャレだと……」
 余計にウザイだろ、と伊月に同意を求めようとする日向の言葉を遮って、伊月は立ち上がりながら言う。
「今は明らかに景気悪いだろ」
 がっくりと力の抜けた様子で、日向が畳の上に大の字に腕を投げ出した。
「……景気はどーでもいいから、ケーキ早くもらってこい」
 投げやりに言う日向に苦笑混じりに頷いて、伊月は部屋を出た。





 本屋に用事があったので、日向が帰るのに合わせて伊月も一緒に家を出ることにした。
 夜に近い夕暮れの住宅街を並んで歩く。
 三月に入ってもまだまだ寒い日が続いていた。乾いた冷たい風に伊月はうう、と唸りながらコートの襟元をかき合わせ、肩をすぼめる。
「何でマフラー巻いてこねーんだよ」
「ちょっと出るぐらいだから平気だと思ったんだよ」
 言い訳をすると、日向がしょうがないな、と白い息を吐いて、自分の巻いていたマフラーをほどいて伊月の首にぐるぐる巻きにした。
「い……いいよ、そんなんしたら日向の方が寒いだろ」
「オレは鍛えてるからへーきだよ。それに本屋着いたら遠慮なく奪い返すから、それまで巻いとけ」
 ん、と頷いて、伊月はおとなしく好意を受け取った。日向の体温で温まったマフラーは、実際よりも暖かく感じる。マフラーに隠れた口の端を少し上げ、くすぐったい幸せを噛み締めた。

                  *                   *                   *