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英西詰め合わせ

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「願いを一つだけ叶えてやろう」

 深夜、突然やって来た馬鹿は星のステッキ片手に俺にそう告げた。顔が赤いので酔っ払っているのだろう。全裸に近いあの格好ではなくスーツで押し掛けてこられたのは救いだった。

「……帰ってください」
「それ以外で願い事言えよ、奇跡起こしてやるから」
「お前が今すぐ帰る奇跡はないんか」
「そいつは奇跡じゃねぇよ」

 本当に殴ってやろうか。そう思ったけど、星のステッキで何をされるか分からないので止めておく。ならば素直になってみるのも悪くはない。

「恋人の酒癖が治りますように。恋人の変態ぶりが治りますように。恋人の料理スキルが上がりますように。……はよう叶えてくれへん?」
「……てめぇわざとだろ」

 半分本気で半分わざとだ。けど、反論しないで半泣きのところを見ると自覚はあるようだ。少し可哀想になった。

「……そんならあとひとつ」
「まだあんのかよ」
「恋人が出来るだけ長く俺の隣にいてくれますように」

 これは奇跡ではなく、この天使次第だなぁと思いながら言ってみる。ステッキを放り投げて手を握って来た男の顔は真っ赤だった。

作品名:英西詰め合わせ 作家名:月子