英西詰め合わせ
玄関のドアを開けた瞬間、視界を満たした赤に思わず固まる。トマトの赤ではなく、スペインの国花であるカーネーションの赤だ。そして、その花束を持って来たのは金髪の青年だった。
「……何してん」
「見ればわかんだろ」
「そんなん言われても」
「ああもう、いいから受けとれ」
困惑していると半ば無理矢理花束を押し付けられる。ふわり、と花特有の香りが鼻腔を掠め、無意識の内に頬が緩んだ。その表現を見られたのか、アーサーが柔らかく笑む。そんな顔も出来るのかと、アントーニョは頬を紅潮させた。
「なあ、アーサーこれ」
「知り合いから貰ったんだ。せっかくだからお前にやろうと思ってな」
「男相手に気色悪いなぁ」
「惚れた奴にプレゼントするのに男とか関係ないだろ」
「……阿呆」
いくら国花とは言え、同性に花束はないだろう。その思考とは裏腹に胸のあたりが温かくなるのは何故か。
「俺、格好悪……」
「ア、アントーニョ?」
熱い頬を見られたくないと、花束に顔を埋めれば少し焦ったようなアーサーの声が聞こえて来る。その声にすら反応して心臓の鼓動は早くなった。