未来について
「そうだなあ。あんまりしょっちゅうだと疲れちゃうから、五年ごととか、十年ごととか、そのくらいのペースでたまに来れたらいいね」
のんびりと返された健二の言葉に、佳主馬は一瞬言葉を失った。未来のことを考えて、五年後にも十年後にもこうして同じ時間をゆるりと過ごすことを考えて、この上なく幸せな気持ちになる。そんなふうに当たり前のように未来の話をする健二のことが愛おしい。こんなに幸せなのになぜだか泣きたくなって、佳主馬は膝の上に抱えた細い腰に腕を回して濡れた髪に鼻先を押しつけた。
「……うん、じゃあ、次はまた五年後に」
「うん」
くぐもった佳主馬の声にこくりと頷いた健二の顔も泣きそうに歪んでいたことを、後ろにいる佳主馬は知らない。
健二は腹の上で交差する佳主馬の腕に手を重ねて、もっと遠い未来にもこうしてここで一緒にお風呂に入っている自分たちを想像して目を閉じた。
〆
未来について
/10.02.15