二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

繋いだ手が熱かった

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
「デートしようか」

そうフランシスに言われたとき、アーサーはフランシスの家でソファーに寝転がって、マカロンを口にくわえていた。
そして思わずマカロンを、ふかふかな絨毯の上へぼとりと落とした。
今思えば、ちょっと自分じゃ買うのをためらってしまう有名菓子店のマカロンを落としたのは、凄く、もったいなかったと思う。

***

デートしようといわれてから、今日…つまりデート当日まで一週間しかなかった。
その間、どういう服をきていこうだとか、どこにデートに行くんだろうとか、そればっかり考えてしまった。
普段は買わないファッション誌も二冊買ってしまった。
結局、ファッション誌はほとんど参考にしなかったけれど、菊に絶対スカートを履いて、生足でいけといわれたので、それだけ従った。
昨日まで悩んで悩んで必死で服やバッグを決めて、今日学校から帰ってから必死に着替えて必死に用意して出てきた。
靴はシンプルなヒールのあるパンプス。
足首のところに細いベルト状の輪がついていて、とても可愛い。
紺色のエナメル素材のそれからは、もちろん素足が伸びている。
服は黒に水色のレースのキャミソールがプリントしてある重ね着風のTシャツの上に白いレースのベスト。それと淡いデニム生地のミニスカートだ。
ツインテールの髪の毛もサイドに少し編みこみを入れた。
メガネだけは何時も通り赤ぶちの眼鏡だったが、アーサーにしては頑張ったほうだと思う。
普段はヒールのあるパンプスなど履かないし、スカートだって制服以外では殆ど履かない。
別にフランシスの為じゃないんだからな、自分が少しは女の子らしい格好をしたかっただけなんだからなっとアーサーは自分に言い訳して少し落ち込んだ。
フランシスよりも一足先に授業の終わったアーサーは、フランシスの通う美大の近くの、大きな時計で待っていた。
よく待ち合わせ場所として使われており、人通りも多いそこで、アーサーは埋もれることなく、むしろ人の視線を集めていた。
なんせ本人はその気は全くないが、スタイルの良い美少女が生足スカートで立っているのだ。
見ないわけにはいかないだろう。
アーサーはそんな周囲のなまめかしい視線には全く気付かず、慣れないスカートが変なのかと何度も鏡を見てきて確認したのにと思っていた。

「アーサー?」

不意に名前を呼ばれてそちらの方を向くと、フランシスが大学のツレ達とともに歩いて来ていた。
知らない人だらけの場所でフランシスと会えたことにほっとする。
一緒に来たのはアントーニョとギルベルトと言っただろうか。
アーサーは一応年上の二人にペコリとお辞儀をした。
二人はアーサーに軽く手を上げて挨拶し、「じゃあな」とフランシスに一声掛けると去っていった。

「…良かったのか、あの二人」
「あぁうん、途中まで一緒に来ただけ…だから」

本当は二人がアーサーを見たいと勝手に付いてきただけなのだが、そんなことを言ったらアーサーが顔を真っ赤にして怒るのが目に見えているのでフランシスは濁した。
言葉を濁したフランシスをアーサーは怪訝に思ったが、二人の事は自分には関係ないかと
結論付けた。

「そうなのか、てか遅ぇよ馬鹿」
「や、まだ待ち合わせた時間より前なんですけど」
「俺より遅かったら遅刻だ遅刻!」
「今日の格好可愛いね」
「ご、ごまかしてんじゃねぇよ」

さらりとフランシスに服を誉められて、アーサーは顔を真っ赤にする。
もっともフランシスは彼女の生足ばかり見ていて、そんな可愛い顔を見逃したのだが。
そうして待ち合わせ時間少し前に、二人のデートは始まった。

***

服を見たりカフェに入ったり雑貨屋を冷やかしたり、フランシスが前から欲しがってた料理道具をみたり、ただそれだけだったが、久しぶりに二人で外でいわゆるデートをして、口には出さないけれどとても楽しかった。
すっかり当たりが暗くなる頃にはアーサーは慣れないヒールに歩き疲れてヘトヘトだった。
慣れないヒールに足は圧迫されて、靴ずれをおこしているような痛みを訴えていた。
でもアーサーは疲れていることやちょっと足が痛いことを、フランシスに悟られたくなかった。
疲れた、足が痛いと言えばこの男は自分が考えたデートプランの途中だろうが何だろうが、家に帰るという選択をするだろう。
歩き慣れないヒールの靴は可愛いけれど、アーサーにとっては気分が上がるわけでもなく、ただそれだけだった。
こんなことなら履きなれた靴を履いてこればもっと疲れず痛くもなく楽しめたかもと思わずにはいられない。
ヒールによって上がった視線も慣れなくて、気を抜けば口からため息が出そうだった。


「っ…」
「どうした?」
「や、何でもない」

自然と目線は痛い足の方へ行く。
たかが靴のことでと思っていたが、靴擦れしたかかとの上だけでなく、小指の付け根も指先も靴が当たっているところ全部が痛い。
歩くたびにズキズキ痛む。
体重がなるべく均等にいくようにと歩いてみるが、痛みは対して変わらなかった。
でも後は夕食を食べて帰るだけだからとアーサーは自分を宥める。
不意にフランシスが人の流れから外れた。
しかたなしにアーサーもそれに付いて行く。
寄り道はしたくなかったがいたしかたがない。
フランシスは、街路樹沿いに並んだベンチの前に止まった。
人が休めるようにと並んだベンチには、もう暗いせいか座っている人はいなかった。
そんなベンチにフランシスはアーサーに座るように促した。
戸惑いながらも座ると、隣に座ると思っていたフランシスが、アーサーの足元に屈んだ。

「何…?」
「見せて」
「……」

フランシスが何を言ってるのか最初わからなかった。
だが、スカートの中を見せろと言われているのではないことはたしかだ。
フランシスは変態であるが、往来でその様なことを強要するような真似はしない。
となると、足元に屈んだ状態で見せれるものといったら、あとは痛む足しかない。
アーサーは靴を脱ぐことに抵抗があったが、フランシスがこちらを見たまま目の前にしゃがんで動かない。
きっと見せるまで動かない気なのだろう。
渋々と特に痛かった右の足首のベルトの輪を外し、パンプスを脱ぐ。
本当は白いはずの足が、絞めつけられていたせいかパンプス型に真っ赤になっている。
案の定痛かったところは擦り切れていて血が滲んでいた。

「あらら」

そんな恥ずかしい足がフランシスの前にさらけ出される。
座って体重がかからなくなった為、そんなに痛くはなくなったが、擦り切れたところは外気に当たってヒリヒリと痛んだ。
フランシスはそっと足を持ち上げられて、マジマジとどこを痛めているか見る。
アーサーは素足を間近で見られることに羞恥を覚えつつも、大人しくしていた。

「結構ひどく擦れてるね、痛かったでしょ」
「…別に」

アーサーは確かに痛かったが、そうとは答えられなかった。
フランシスはアーサーの答えを痛くなかったと答えたと捉えて苦笑した。
そしてフランシスは少し考えた後に口をまた開く。

「…夕飯、家で食べようか。材料あるから作るよ。うちでも良い?」

フランシスは帰ろうとアーサーに促した。
アーサーもそれに素直に頷く。
作品名:繋いだ手が熱かった 作家名:木乃瀬衣