女々しくて寂しくて
それは一週間前、いつものように坊やの作った夕食を食べてる時だった。
「おっさん、来週からしばらくフォルトゥナに行くから」
俺は思わず食事の手を止め坊やを見た。
坊やは普段通りの顔で話しを続けるが、俺の中ではある一つのことが頭を占めていてそれどころじゃなかった。
否定されるのが恐くて口に出せない疑問。
──またここに帰ってくるのか?
こんな一言を聞くのが恐いだなんて、俺も丸くなったもんだ。
いや、坊やと出会ってから変わったのか。
そんなことを考えていると、何も言わない俺を疑問に思ったのか坊やが話しかけてくる。
「おっさん?」
「あ、ああ…」
「ちゃんと聞いてたのかよ?」
「大丈夫、ちゃんと聞いてたさ」
「ならいいけど、一週間ぐらいで帰る予定だからよろしくな」
「わかった…」
ネロ、お前は気づかなかっただろ。
お前が言った『帰る』という一言に俺がどれだけ安堵したかを。
まあそんな情けないことを教える気はないがな。
そうして出発までの一週間、坊やはコツコツと里帰りの準備をしていた。
徐々に冷蔵庫の中を空にし、家の隅々まで掃除する。
俺はいつもの場所に座りながらまめなやつだと思いながらも、寂しさを感じていた。
短いようで長い一週間もの間、傍らに坊やがいないと思うと何故か寂しかった。
今まで仕事でしばらく離れていたこともあったってのに不思議な感じだ。
薄々理由もわかってはいるが、情けなくて認めたくない。
本当に帰ってくるかどうか今だに不安だなんて女々しすぎる。