女々しくて寂しくて
そして当日。
「冷蔵庫の中身は空にしたし、荷物もこれでよし!そろそろ行くか…」
どうやら準備も完了し、もう出ちまうようだ。
俺はちゃんと笑顔で見送れるだろうか。
「坊や、いってらっ」
「じゃあ行こうぜ、おっさん!」
「………は?」
坊やは今、なんて言った?
「なんだよ、まだ準備出来てないのかよ?」
「いや、そうじゃなくて…」
「じゃあ出発する日間違えて覚えてたのか?それとも忘れてたとか言わないよな」
「いやいやいや、もちろん日付は覚えてたがなんで俺まで行くことになってんだ?」
「おっさん、まさか話聞いてなかったのかよ?」
「え!?えぇ~と…」
話ってのは一週間前のだよな?
そういえば坊やは色々話してたみたいだが、俺は坊やが帰るってのに動揺してて全然聞いてなかったな。
「キリエにお祭りがあるって誘われたから、一緒に行くぞって言っといたろ!」
「わ、悪い聞いてなかったみたいだ」
「まったくおっさんはしょうがないな」
「でも坊や、せっかくの里帰りなのに俺が着いていっても」
「だからおっさんも行くんだろ、それにおっさんを一人に出来るわけないじゃんか。そんなことより時間がないんだ、ぐだぐだ言ってないでさっさと支度してこい!」
「わ、わかった!わかったからバスターはやめろ!すぐ支度してくる!」
坊やは急いでるのか右手を構えて怒りだしたので、俺は急いで階段を登り部屋に駆け込んだ。
「まったく坊やは…どうしてこうも俺の欲しい言葉をくれるんだろうな」
扉にもたれつつそんなことを呟くと、謀ったかのようにに急かされる。
「おっさ~ん!まだか~?」
「ちょっと待て!あと少しだ!」
俺は大急ぎでトランクに荷物を積めつつも、顔がにやけるのを止められなかった。
end