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【腐向け】1つのジュースを分け合うぷにち【普日】

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直径7センチ程の円を描くグラスの口を見つめて、顔を赤くしたかと思えばすぐに青く表情を変える。
忙しなく何度も表情を変えて最後にため息を吐いた日本は「やっぱり無理です」と呟いた。


ことの発端は数時間前。
プロイセンの一言から始まった。
「おい、聞いたぜ。お前イタちゃんにハグされて責任とれって迫ったらしいな」
「…あれはその…」
「兄さん、あまり言ってやるな。日本にはハグの習慣がないんだ。慣れていないものに戸惑うのは当然だろう」
助け船を出したドイツに軽く頭を下げて感謝を示した日本は目の前のグラスを口に運ぶ。
そこに「でもでも〜」とイタリアが能天気な口振りと賑やかな手振りで続ける。
「日本ってば顔真っ赤にしちゃってさ。すごい慌てちゃって『はじめてなんです!』とか言っちゃってさ。すごい可愛いの。日本が女の子だったら俺、本気で口説くのに!」
日の沈みもまだ浅い夕暮れ時、早めに訓練を終えた4人はカフェで一杯と洒落こんでいる。
話題にされた本人は頬を染めて俯いてていたのだが、イタリアの言葉にぽつりと反論をこぼした。
「だって仕方ないじゃないですか…本当に初めてだったんですから……」
染めた頬を更に赤く染めながら発した日本の言葉に、残りの3人の空気はそれぞれの唇を驚きの形に作ったまま止まった。
「やっぱり日本は可愛いね〜」
一拍おいた後のイタリアの言葉に再び動き始めた空気をドイツが隣でため息をついて更に動かす。
「なんだ…しかし…その、多少のことには慣れてもらわんと困るな」
いろいろな意味でやりにくいんでな……そう加えるのはさすがに遠慮したドイツが正面に座る日本を視線で伺うと、日本はうつむきながらもコクリと頷いて口を開いた。
「そうですよね。郷に入ったら郷に従え……このままではいけないと分かってはいるのです」
殊勝な答えに隣に座っていたプロイセンが日本の肩に手を回して体を寄せる。
「よーし、だったら話が早え。俺様が特訓してやるぜ」
「近いっ…顔が近いですよ。師匠っ!」
肩を寄せるプロイセンを頬を赤く染めた日本が壁側へと押しやる。その様子にイタリアが「あれ?」と口を開いた。
「もしかして、日本ってハグとかじゃなくて顔が近いのが苦手なの?」
「あ…ある程度の距離は必要だと思いますっ…」
イタリアの言葉に珍しく意見を言った日本にドイツがため息をつく。
「そうか、そこが原因なのか…」
「だったらもっと話が早えじゃねーか」
プロイセンの言葉に他の三人の視線が集まる。
「原因がはっきりしてるんだ。そこを克服すりゃいいだけだろうが」
「なるほど」
日本以外の二人が頷く間に、プロイセンはカフェの隅のテーブルに目をつけた。
「よし、あれで特訓するか!」
プロイセンが指差した先にはカップルが一組、一つのグラスに2本のストローを差してジュースを飲んでいる。
日本の顔からさーっと血の気が引くのをよそにプロイセンは店員を呼びつける。
「オレンジジュース1つ。ストローは2本でな!」
ケセセセと彼の固有の笑い声が響く頃には店員はカウンターへと戻っていった。店員の顔が酷く微妙な表情をはりつけていたのに気づかなかったことは日本の不幸中の幸いだろう。
数分後にやはり微妙な表情の店員が持ってきたグラスにはオレンジ色の液体にストローが2本差し込んであった。
オーダーどおりなので当たり前といえば当たり前の光景なのだが、いざそれが男4人が座るテーブルに置かれると奇妙な光景に見える。
「さて、やるぞ」
自分側に傾いたストローを咥えながら、プロイセンは半ば上目遣い気味に日本を見る。
「むっ…無理ですって」
「あぁ!?何でだよ?」
ふるふると首を振る日本にストローから一旦唇を離したプロイセンが首を傾げる。
「こんなのどうってことないだろうが」
「どうってことなくないですよ!……心の準備が必要なんですっ」
プロイセンと逆側を向いて俯く日本にイタリアが優しく声を掛けた。
「そうだよね。やっぱりいきなりはよくないよね」
「うむ。そうだろうな、徐々に慣れていく必要があるだろう」
ドイツの言葉に今度はプロイセンが頷く。
「そりゃそうだ。じゃあ明日から俺がみっちりしごいてやるぜ」
「苦手克服か…兄さんそれはいい考えだな。ではイタリアは俺と一緒に体力作りの特訓だな」
「ヴェー。なんでそうなるんだよ〜」
唇を尖らせるイタリアをドイツが軽く小突いて続ける。
「苦手克服の特訓だ。日本だって頑張るんだからお前もそのくらいやれ…な」
最後の「な」で視線を送られた日本は「苦手克服の特訓」とやらから自分も逃れられない運命と知って表情を固まらせた。


それが数時間前。
自室に戻った日本は空のグラスを相手ににらめっこを続けている。
見つめるグラスに想像のストローを差して、日本はまた表情を青く変えた。
想像上のストローを咥え、更にもう1本をプロイセンが咥える様を想像して、口からストローを離す。
「やっぱり無理です。無理に決まっています」
日本の呟きをよそに夜の色は濃くなっていき、確実に夜明けへと移っていった。


明くる朝。
昨日の出来事を夢の出来事に出来ないものかと何食わぬ顔をして通常の訓練に参加しようとした日本を「おいおい」とプロイセンが声を掛ける。
「お前はこっち」
プロイセンが日本を案内したのはプロイセンの自室だった。
「なんだかよ。ヴェストのやつが日本はきっと人目も気にするはずだからっていうからよ」
そう促されて入った先には、普段のプロイセンの挙動からは想像がつかない整頓された空間が広がっていた。
日本はその部屋の雰囲気に懐かしさを感じて表情を綻ばせた。無論、それは一瞬の小さな変化で彼と長い付き合いが無ければ気づかない程度だったが。
「お前がここに来んのも久々な気がすんな」
日本の表情の変化に気づいたのか、気づかなかったのか、日本の思い出していた風景をプロイセンが語りだす。
「あん時のお前、もっとしかめっ面だったよな。ちびっこいのがしかめっつらで本と書類をにらめっこしやがって……近くに俺がいんのになかなか声掛けてこねーし」
「それは慣れてなかったんです」
「そうそう。慣れた途端に質問攻めしてくるし……面白かったぜー」
ケセセと笑いながらソファーに日本を促すとプロイセンはその隣に座った。
テーブルの上には既にストローが2本刺さったグラスと、ピッチャーに入ったオレンジジュースが用意されていた。
「さて、やっか」
プロイセンがピッチャーを傾けてグラスにジュースを注ぎながらそういうと、日本は体を強張らせる。
「まーそんな固まるなってーの。何事も慣れだろ」
「……そうでしょうか?」
「そうだろうが、ろくに話しかけられなかったお前がこんだけしゃべれるようになってんのが何よりの証拠だろ。つべこべ言わずほら…」
言葉尻にストローを咥えたプロイセンが軽く顎をしゃくってもう片方のストローを差す。
「分かりました。ここまできたら腹を据えるしかないようです」
日本は眉根をぎゅっと寄せて目を瞑るとストローを咥え、一気にジュースを吸い込んだ。
ジューッと吸い込んだジュースを一気に飲み干した日本は肩で息をしながら、プロイセンへと向き直り、笑顔を作る。