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FREC2[夏コミ新刊]

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ここでは6章構成のうち、2章から5章を少しずつ抜粋して掲載しています。ネタばれはありませんが、展開がわかってしまうのはちょっと…という方は読まないで本を楽しみにしていて下さい^^
 第6章 Mattina 〈朝〉だけはネタばれするとまずいような気がしたので、掲載していません。





第二章 Avversario 〈敵〉

「カークランド卿のような方と結婚できるフェリシアーノ様は、本当にお幸せですね」
「え。え!?」
「あ――す、すみません、出過ぎた物言いを」
 菊は慌てて顔を伏せた。つい、彼が優しいから使用人のくせにこのようなことまで言ってしまう。自らの驕りを振り払うように胸に手を当てた。
 アーサーは顔を伏せる瞬間に少しだけ見えた彼の頬が赤く染まっているのが見えて大混乱に陥った。心臓がひっくり返ったような気分だ。
 菊が顔を赤くして胸を掴んで声を震わせて、目を逸らしている。更に先程の発言は、まるで――まるでアーサーに恋してしまった自分を諫めるための自虐のようだ。
 彼でなくても実際に菊のこんな行動を見てしまったら勘違いは続出しただろうが、正しく菊に恋している彼は頭が沸騰して身体中から妙な汗が出始めた。フランシスがいたら引いていただろう。しかし幸か不幸かここに良いストッパーである彼はおらず、二人きり、である。
 アーサーは汗の滲んだ手袋を外し、テーブルに置いた。思わず唾を飲み込んで、顔を伏せたままの菊の手を、膝の上で重なっていたそれを取った。
「カークランド卿?」
「菊、俺はお前が――!」
「きく――――――!!」
 突然絶叫と共に扉が開き、二人が顔をそちらに向けるとほぼ同時にアーサーの顔面に蹴りが入った。端正な顔からぐちゃりと生々しい音がし、ソファの背に昏倒する前にドレスの裾が翻ってフェリシアーノはカーペットの敷かれた床へと着地した。
「か――カークランド卿!?」
「菊! 近づいちゃだめーっ!」
 ぴくぴく震えるアーサーに慌てて近寄りかけた菊は、フェリシアーノに飛びつかれた。ふぐっ! と菊が悶絶しているのも見えていないようで、彼女は菊の肩に頭をすり付ける。菊の方が背も低いため押し潰されそうになった。
「フェリシアーノ様、あの、ちょっと…!」
「だめだよ菊! アーサーは菊のこと襲おうとしてたんだよ!?」
「はあ…?」
「てめえフェリシアーノ! いい度胸してんじゃねえかあああ!」
 飛び起きたアーサーはフェリシアーノに掴みかかろうとしたが、フェリシアーノは菊を抱きしめているしその菊はいつも紳士のアーサーが突然大声を出したのに驚いて目を見開いている。
 アーサーは握った拳を慌てて後ろに隠して顔に笑みを張り付けた。口元が僅かにひくついている。
「よおフェリシアーノ。元気そうだな、とっても」
 皮肉たっぷりの言葉にフェリシアーノは菊から離れると、こちらはにっこり綺麗な笑顔を見せる。
「こんにちは、カークランド卿。ようこそいらっしゃいました」
 両手でドレスの裾を持って丁寧に頭を下げる様は美しい令嬢だが、さっきの今なのでアーサーの血管が浮き出たのみである。





第三章 Raccolta 〈収穫〉

「元気そうじゃねーか。そういやこの間の狙撃大会、ジョーンズに負けたって本当かよ?」
「ギルベルトさん…!」
「…我が輩の訓練が足りなかったのは認める。しかしあいつはとにかく両手でバカスカ打ってきてな。来年からは弾数に制限が加わるというから、貴様も出場するがいい。最近王族が召し抱えたとかいう凄腕も入ってくるらしいし丁度いいのである」
 途端に低い声で捲し立てられギルベルトはちょっと後ずさりかけたが、そこはそれ、彼は怖いもの知らずだった。
「ケセセセセ! 俺はあのジョーンズに狙撃の勝負で勝った男だぜ! ま、ヨユーだな!」
「貴様が? 本田、本当か?」
 真剣な瞳に問われて菊はあはは、と乾いた笑い声を上げた。
「私は見ていないのでなんとも…ただ、賭けの商品の巨大卵割機を持って帰っていらしたので、本当だと思いますよ。ルートヴィッヒさんの証言もありますし」
「お前、菊! 信じてなかったのかよ!?」
「あぁ、成る程。あのお馬鹿さんが悩む姿がまざまざと思い浮かぶのである」
 バッシュの言っているのはローデリヒのことだろう。本人たちはあまり互いのことを語りたがらないが、どうやらかなり古い付き合いの友人らしい。
 一人で勝手に怒りだしたギルベルトを無視して、それでは失礼する、と彼は二人の目の前を歩き去った。ではまた、と菊が言うとほぼ同時にベルが鳴って彼は出ていった。
 ギルベルトは腕を組み、鼻を鳴らす。馬鹿にされて悔しかったらしいが、彼の本分は狙撃ではなく腕っ節が問われる喧嘩と剣技だったはずだ。
 それを問えば、「悔しいもんは悔しい」と素直な返答を頂き、菊はなるほど、と相槌を打った。
 チーズとバターを買い、店を出る。
「そう言えばバッシュさんは妹さんがいらっしゃるとお聞きしました」
「あれ、お前会ったことなかったっけ? いるぞ、ちっさいのが。今年の狙撃大会にも連れてきてたらしいな」
「妹さんをですか?」
「おう。何でも妹の方も結構な使い手だとかで――」
 ギルベルトは言葉を切った。進行方向左手で市場の人々の波がうねり、一方向へ皆の視線が向いている。ギルベルトの目が人の流れを追いかけて、町の南方面が沸き立っているのを見据えた。
 綺麗な赤がきらり、と好奇心に輝く。
「何かあったんでしょうか」
「行ってみるか」
「あの、買い出し、」
「こういうのを知っとくのも防衛役の役目だよな! だろ!」
「はは…」
 菊は苦笑しつつもギルベルトの言い分はもっともだった。ローデリヒはああ言ったが、彼を買い出しにやったのはそのせいもあったのだろう。彼でなかったらルートヴィッヒが一緒に来ていたに違いない。
 二人は人波に乗って南へ向かう。広場で何か行われているようだ。大道芸か、それか行商人の類か。そこまで考えて菊はまさか兄ではないかと足を止めそうになった。しかし足を止めれば小さな菊は人波に埋もれてしまうので仕方なく歩く。
 兄だったら他人のふりをしようと思って付いていくと、聞き慣れた大声が迎えてくれた。
「Hey Look! これが新しいオレンジの皮むき機さ!」





第四章 Duello! 〈決闘!〉

「ああ、わがった。ティノ」
「はい――ああ、皆さんすみません。ベールヴァルド様はあまり口数が多い方じゃなくてですね。僕から説明しますけど、皆さんがいらっしゃることは大体予想がついていたんです。そりゃ、心配ですよね? こういうのって、いろんなことに抵触しますしね。で、提案を一つさせて頂きたいんですが」
「提案?」
 訝しげなローデリヒにはい! とティノは笑う。
「後から難癖つけるのとか互いに嫌でしょう? だからもう、一発勝負でいきましょうってことにしたんです。的を撃てるか、撃てないか」
 ばあん、と彼は手で銃の形を模し、口で音を上げた。
 的を十数メートル先に立てる。それに当てられたらクリア。駄目だったら脱落。全員挑戦し終わったら的を同じ直線上に少し先へ離す。それを繰り返して最後に残った者が勝者。勝っても負けても恨みっこなし。
作品名:FREC2[夏コミ新刊] 作家名:碧@世の青