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テクニシャンな彼

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はいおしまい、とぽんと両肩を叩かれ、エドワードが突っ伏していた体を起こす。
「あー、体軽くなった。サンキュな、アル」
「どういたしまして」
エドワードはぐうっと伸びをして、へにゃんと笑うと口許を手の甲で軽く擦った。
「寝そうになった。危うくよだれ出ちまうトコだったぜ」
「兄さん…子供じゃないんだから」
執務用でないとはいえ、机にかじりついてよだれを垂らす国軍大佐など間抜けで絵にもならない。
「えー、だってマジでめちゃくちゃ巧いんだもん。ね、少佐?」
「ええ、私も眠りそうになったわよ」
エドワードに頷くと、ホークアイはカップは後で持ってきてね、と言い置き盆をテーブルに置くと、執務室を出ていった。




「…ボク殆ど肩こりしない体質だから、凝りが解れる感覚って良くわからないんだよね」
「いや、まあ凝らねぇ方が楽だからな。…つーか、それなのに何でツボの位置とか詳しいんだよ」
この兄弟の持つ知識量はすさまじいが、実は所持する知識の範囲というのは兄よりも弟の方が広い。
例えば、ある1つのジャンルに集中するのがエドワードなら、関連する他のジャンルにも手を伸ばすのがアルフォンス、といった具合に。
「研究所でボクの助手をしてくれてる人がね、実家が鍼灸院なんだ」
「助手って…もしかして、この間オレが研究所に行ったとき一緒にいたヤツか?やたらとテンションの高かった」
「うん、その人。兄さんのファンなんだって」
「…なんでオレなんかの」
「いろいろ有名だからね、兄さんは」
「や、オマエもだろ」
すかさずツッコミを入れたエドワードに、兄さんほどじゃないよとアルフォンスはうそぶいて。
「…それでね、兄さんが肩凝りしやすいんだって話したら、”ぜひやってあげてください”って教えてくれたの」
「へー、そういうことだったのか」
ソファから降りて靴を履いたアルフォンスを見ながら、エドワードが感心したように頷いた。






「───それで?少将たちは何やってたんだ?」
ソファに並んで腰を下ろし、いただきますと小さく告げてカップを手に取り、エドワードが改めて尋ねると。
「い、いや何でもねぇんだ。気にすんな、大将」
「そうそう、気にするな」
自分たちで勝手な想像を繰り広げていたハボック達は、慌てて首を横に振ってごまかす。
「じゃ、じゃあハボ、俺たちいい加減仕事に戻ろうぜ」
「そうだな、そうするか。…ほら少将も!まだ仕事溜まってるんでしょうが」
「あ…ああ、そうだな。……では鋼の、これで仕事が終わりなら、気を付けて帰れ。アルフォンスもな」
非常に居心地の悪くなった3人は、そそくさと執務室の前から去ろうとする。






ふいにアルフォンスが立ち上がり、背を向けた3人の方へ歩いていく。
歩いてくる彼に気付いたハボックが思わずぎく、と体を震わせた。
「…3人とも。ずいぶん前から、扉の前にいらしたみたいですね」
ドアノブに手を掛け、エドワードまでは届かない程度のトーンでアルフォンスが穏やかに言う。
「───場所的には悪くないですけどね、兄さんが嫌がるから、ここではしませんよ。…ここでは、ね」
かすかにわらうような声音で続け、ぱたんと扉を閉める。






どたたた!と扉の向こうで大きな音が響く。
「?何だ、一体…」
「さぁ?誰かがどこかに引っかかって、転んじゃったんじゃないのかな?」
軽く肩をすくめて、アルフォンスは兄の隣に戻り腰を下ろす。
「ふーん…」
エドワードもさして気に留めるほどでもなかったようで、適当な相づちを打ってまたカップに口を付けた。




作品名:テクニシャンな彼 作家名:新澤やひろ