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空の境界~未来への奇跡~1

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〜未来序曲〜

僕は、結局大学生に戻ることにした。
理由は簡単、式(しき)が卒業したら大学に入学することを約束してくれたからである。

「お前が、大学中退したせいで、鮮花(あざか)がつっかかてくるんで、俺としても、もううんざりしているんだ。」

とのことだ。

 退院後、僕等が絡んだ一連の騒動が終わり、時々燈子(とうこ)さんから

「義眼を作ってみる気は、ないかね。」

なんて聞かれたりしているが、明らかに作為的なものを感じるので、断ってはいるものの、片目になったせいで、運転免許の取り消しを食らってしまった。
幸い、志望大学は、三駅位のところにあって自分が中退したところだ。かって知ったる何とやらは、このことなのだろうか。

「何考えている?」

隣で歩いていた式に、声を掛けられ我に返った。

「いやなんでもない。」
「へらへら、思い出し笑いしていてなんでもないなんて、嘘だね。」

僕は、反論しようとしたが、実際していたかも知れないので、否定できない。

「正直、約束どおり、一緒の大学に行けるようになって楽しみなんだよ。」
「俺は、そんな約束した覚えがないがない。」

フイット、式は顔をそらす。正直ここまでくるのには、式が覚醒してから、お互いの家庭問題が浮上したことは、言うまでもない。
特に、式の実家両儀家(りょうぎけ)の問題が大きかった。それは、式が高二になって間もなく起こった。
 
 私は、いやいや両儀家の敷居を跨ぐことにした。かれこれ、めったに帰ってきていないだけにどの面下げて親父、お袋、兄貴に会えば良いのかわからなかった。
しかし、幹也は

「一度は、帰って今後の身の振り方話したほう良いよ。」

と一般論を論じてくる。何分こっちはいろいろと厄介なことが多すぎて、それどころではなかったのをいいことに、覚醒してからというもの、一人暮らししたいという我侭を言ってしまって、信用という名の残金ゼロに等しいのだ。おまけに、緊急事態とはいえ家から、三百年物の古刀を御釈迦にしたり、いろいろたかってしまっている。
それでも、やっと玄関前まで来たのだから、根性だけは着いたと思う。だが問題この玄関を開けて、中に入るのが問題だ。すると、まるで見払ったように、中から黒桐幹也(こくとうみきや)が出てきたのだ。

「式、こんなところで何しているの?」

本来、その台詞は俺が、言うべきものなのだが、不意を疲れた性で声がでない。すると幹也の奴が、これ知り顔になっていた。

「はは〜、君もやはり疎遠にしていた家族は、苦手なんだ。」

図星を言い当てた。一瞬の内に奴の死線を切ってやろうかとしたのだが、生憎と家に帰るだけという気を、していただけに愛用のナイフを部屋においてきてしまっていた。

「こんな、ことになるだろうと思って、前もって秋隆(あきたか)さんと、話していて正解だったね。」

すでに、行動を読まれていたなんて不覚もいいところだ。

「お嬢様、勝手なことをして申し訳ありません。」

玄関には、土下座をして自分を待っていた、秋隆かがいた。

「なにぶん、お嬢様の大事に関わりますこと故、黒桐様にご協力いただきました。」

この二人は、一人暮らし中にもいろいろ交流があり、私宛の荷物を幹也に預けたりもするほどの信頼関係がある。

「それじゃ話し合い頑張ってね。」

私のことを置き去りにして、帰ろうとする、幹也の腕をとっさに掴んだ。

「どうしたの?」
「俺と、話すと言葉足らずで、角が立つかもしれないからな。お前に間に入って貰う。」
「それは構わないけどただ、自分のこれからの進路と、三者面談で話すだけなのに?」
「そうだ。大学に行く事を了承してもらうのだから、貴様も同罪だ。」
「何故?」

私は、あえてその問を無視した。それは考えれば、考えるほど顔が熱く成ってきて、どんな戦闘時と比べても、心臓が高鳴ってしまうからだ。
それに、こいつは、私を「許さない」とあの雨の中、泣いているにも拘らず、いいのけたのだ。なら、二度と間違えの起きない様その隻眼で、しっかり見ていて貰はなければいけない。その覚悟も試させてもらおう。逆上して親父殿を切らないように。

〜「僕」の未来決定の時〜

僕は、何を間違えてしまったのだろうか?
ただ、
「式の三者面談への参加をご両親にお願いする。」と「大学への進学を容認して貰う。」ことを、頼みに来ただけなのに、魔術師やそれなりの修羅場のような殺気が、自分へ向けられていた。出している犯人は、式の「お父さん」である。

「僕、何か気に障る様な事したかなあ?」

いくら考えても思い当たらない。直に聞こうにも、そんな雰囲気ではない。一応話しの方は、前もって秋隆さんを道して、それなりにこちらの要望は、耳に入れて貰っていただけに、スムーズに進んだが、お母さんの手腕と言ってよい、一向に僕への殺気は、治まる事はなかった。それに輪を掻けて、同席していたお母さんの方は

「お夕飯食べていきます?」
「今晩は、泊まっていかれます?」

と少々脱線しそうな事を話しかけてくるのである。その度に、殺気が強くなるのは、気のせいではないことも、式との付き合いで、肌で感じ取れる。

「この状態での、回避行動取れるかな〜」

と考えてしまうほどだ。
式は式で、そんな僕の様子を「シテヤッタリ」顔で見ていた。式は、こうなることを解っていて、僕を嵌めたのだ。

「すでに、夕食の方は準備しているので。」

と苦しい回答で、宿泊の件を辞退するのが精一杯だった。
帰りに僕を途中まで送っていくと、式が言い出し駅まで、歩くことにした。

「ひどいよ式、お父さんに睨まれて、いるとき笑いこらえていただろう。」
「あたりまえだ。あの時のお前の顔ときったら…」

そういうと式は、大声で笑い出した。こんなに感情的に可笑しくって笑う式を僕は、今まで見たことがなかった。正直驚いたが

「これも、本当の式なのだな。」

と正直に思えた。
いつも、狩の対象者を探して、夜を俳諧している式も、本当なのかもしれないけれど、この今無邪気に笑っている、少女も本物なのだ。また違う式に出会えて嬉しかった。
駅の前まで付くと少し寂しそうに僕を見上げていた。

「それじゃ、今日は実家でもう少し、話詰めないといけなさそうだから、帰るとする。」

言葉とは、裏腹に何か寂しそうに感じた。その眼に「直死」意外の魔力を感じた。棟子さんに言わせれば、「魅了」と言う魔法かもしれない。それは、確実に自分を虜にしていた。
「魔が刺した。」と言うべきだろうか。一瞬記憶が消えとある衝動に駆られ、自制を掛ける間もなく行動に移ってしまった。
気が付いたら、式の唇を奪っていた。
ただ、唇同士が触れ合っているだけなのだが、それは一瞬の迷いでもあり「愛おしさ」でもあった。
式のほうも、何があったか判らず呆けていた。
唇を離すと、そこには、放心状態の式がいた。

「とりあえず、本日の報酬は貰ったよ。式」

その言葉で、われに返った式が肩を振るわせ始めた。式の場合グーの一発ですまない命の危険を経験上、感が知らせていた。

「それじゃあ、明日も事務所で待っているから。」