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空の境界~未来への奇跡~1

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そういわれとっさに、棟子さんの名前を出してしまった。


「本当にそれだけか。」

私は、気圧されして頷くしかなかった。最も大輔とはあまり話していないので、お兄ちゃん程よくは知らないのだ。

「フム、それじゃ何故ああも、私が魔術師」だとわかったのだろうか?」

ことの経緯が解からないだけに、どうした物か考えあぐねていた。

「あの、それより師匠」
「ああすまない。」

そういって部屋中にあった炎塊と敵意が消えほっとした。

「師匠ほんとに、大輔と何があったんですか。」
「ああ、あいつからプロポーズされた。」

ガタ、初めて腰を抜かした経験をした。
結局その日は、修行ではなくお兄ちゃんの変わりに、事務整理をすることになった。


〜未来への「因果」〜


僕は、次の日丸一日部屋で、式とダラダラしていた。「式が家に帰りたくなるまで。」と思い付き合っていたが、気がついたら自分も引き止めていた。そして結局丸一日、ダラダラと過ごしてしまった。棟子さんには、式から電話をして「若いというのは、素晴しいね〜。ま、殺さない程度にしておくれ。」と、こちらの状況が解っているかのごとく、冷やかされたらしい。否定できないだけに、なんともいえない。結局式が帰る決断をしたのは、その次の日の朝だった。

「また来るぞ。」

そういって出て行った。それから一週間、まだ実家との話し合いが続いているのか、式の部屋にも戻ってきている様子もなく、帰路にいた。こっちもこっちで、親に頭を下げなければならなかった。なにぶん、親の言い分も聴かず勝手に大学を辞めてしまったのだから、「面の皮を厚く」して、交渉せねばならなかった。取りあえず、前みたいに「自主中退」の禁止と「何があっても、私達に知らせろ。」という事を約束させられた。棟子さんの人形展を見に行った帰り僕は、何かの衝動に刈られ、出品者を見つけ出し、その足で殆ど説明のしないままにあの事務所に向かっていた。常識という範疇から、逸脱しているように思えて当然だ。
電話がかかって来た。

「幹也か、今どこだ。」

あわてている様子だった。

「いま、もうすぐ自分の部屋だけど?」
「すぐに、事務所に戻れ。」
「どうしたんだ、一週間も顔も見せないで。」
「そんなことは、どうでもいい。急げ。」

そういって電話は切れた。

「いや、もう無理みたいだ。」

すでに、一本道の進行方向と反対側の両方から、黒服の男達が近づいてきていた。