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届かないから歌わない

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 他に誰も居ないと思って大口を開けて欠伸をすると図っていたかのようにドアが開いた。Tシャツにジャージを穿いた皆本が顔を覗かせる。
「眠いんだったら寝てても良かったんですよ」
 こうして変な生活を初めてから互いの部屋に寝袋を持ち込んでいた。たしかにテレビを切って篭もってしまえば何も聞こえず何も見えない。
「それも嫌だったんだよなぁ」
 こいこいと手招きすると素直に寄ってきた。具合でも悪いんですか、と床に膝をついて顔を覗き込んでくる。ああこいつのお人好しは病的だ。絶対変な人間に捕まるに違いない。そう自分自身を棚に上げて腕を伸ばした。
「へっ、え、ええええっなんですかさっかきさん!?」
 首に腕を回してがっちりと抱きつく。上半身だけ伸ばしてるからけっこうこの体勢はきついなぁと、シャンプーしたての髪は良い匂いがする。
 そういえば、今の自分も同じ匂いがするのだったと思いつき内心だけで照れた。
 力を込めた分だけ人の温もりが強く感じられる。気紛れに皆本を読んでみると拒絶の感情は無く、ただただ慌てているだけとしって尚更照れてしまう。
「なぁ皆本ー」
「っな、なんですか」
 コメリカに居てなお、まだ人とのハグに慣れていないらしい。こんな所もまたらしいと心の中で笑った。
「俺の事さん付けで呼ぶの止めようぜー」
「……年上という自覚はありますか」
 ぽんぽん、と皆本の腕が背中を叩く。まるで子守でもしているような調子だが、拗ねる感情は湧いてこず、ただもう少しだけ甘えてみたいという気持ちで満ちた。肩口に当てた額を強く押し込めると尚更強く抱きしめられる。
「あるある、大有りに決まってんだろ」
「こんな年上見た事は有りませんけどねぇ。こんな事するのは女の子にだけじゃないんですか」
 ――賢木。
 そう付け加えるように呼ばれて何故か身の内に炎が踊った。
作品名:届かないから歌わない 作家名:nkn