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悪循環パンダ

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「きーくっ!!」

なんだか嬉しそうな恋人の声が聞こえて、はいなんですか、と振り返ると視界が白と黒に埋まった。
そして口にはもさもさとした感触。
しばらくソレをぐりぐりと結構な力で押し付けられて、ちょっと痛い。
ようやくソレが離れると、ようやく開けた視界でやはり嬉しそうに笑う可愛い恋人。
彼は手に持っていたソレ、きっと想像するより大きい、額に『香』と書かれたパンダのぬいぐるみを掲げてけらけら笑った。

「うばっちゃった☆」
「・・・『ちゃった☆』って、自分の歳と性別考えてくださいって言いたいところなんですが、超可愛いですギルベルトさん」
「あはは、お前も大概ダメだよな!」

口の周り、真っ赤になっちまったな、とそれでも嬉しそうに彼は笑う。
妙に、ご機嫌である。

「どうしたんですか、そんなにコロコロ笑って」
「んー?いや・・・な?////」

によによ笑いながら照れる。
先を待っていると腕に抱きかかえていたパンダをまたこちらに寄越す。
寄越すというと響きがいいが、要はまた口に押し当てられたわけだ。

「ふがっ」
「・・・こうやって、このパンダにお前のキス貯めとこうと思ったんだよ」
「? ふが?」
「だ、だから!会えない間とか、寂しいから・・・、こいつにお前のキス貯めといて、こいつとキスしたらお前とキスできたことになるかなって、な?」

パンダを私の口から離し、大事そうに抱える。
え、一体どこの乙女。

「・・・ガチですか?」
「が、ガチじゃねえよ!さすがに、本気でそう思ってるわけじゃねえけど・・・・気休めには、なるかって」
「ギルベルトさん・・・」

衝動に任せて彼の胸倉を両手で掴んで引き寄せる。
かぽ、と音でもなりそうな勢いで彼の唇を塞いだ。
最初は驚いて目を見開いていたギルベルトさんも、次第にゆるゆると瞼を下していった。

「ん・・、ふ・・ぁ、きく」
「ギルベルトさん、私今すんごい幸せです」
「そ、か?なら、よかっ」
「でもとりあえず、その白黒の生き物にものすごく嫉妬を覚えるので、ソレ捨ててください。代わりにうちのこけしあげますから」
「お前んちのコケシ怖いんだよ。夜にアレに遭遇したくねえ」
「なんでですか、可愛いでしょう。私にそっくりで」

ずい、とおかっぱ頭のわが国伝統の品を突き出すと頭を付き返された。つれない。

「大体・・・俺の菊はもっとかっこいい」
「あーもうバカじゃないですか襲いますよ?真ッ昼間から」
「・・・・いいぜ?こいよ」

ふ、と妖艶にわらう。この人はあどけない様からいきなり遊女の様に変わる。
それに乗せられる私は大概この人には適いっこないと分かったのは随分前のこと。




作品名:悪循環パンダ 作家名:桂 樹