昼のメニューは
衛宮士郎という人物は、自分から見ても変人だと思ってしまう。
理由は幾つか有るが、突っ込んで尋ねた事は無い。というよりもいまいちその辺りを聞ける様な隙が、これでいて少ないのだ。自分よりも旧い友人だという慎二も知らない様子であるから、特に自分に対して警戒している訳ではないのだろう。
ならば、この状態が衛宮にとって常態であるというのか。
それは難儀な事ではないのか、と思いながら熱い焙じ茶の入った湯飲みを握りしめた。
生徒会室の昼休みは平和である。
ビジネスライクな人間が多く集まった今期生徒会員は、この場所を使う気がないらしい。尤も、自分が常に入り浸っているという事も有るのかもしれないが。兎に角、人が居ない生徒会室は平和で静かだ。
最初に衛宮を誘ったのは、挙動不審に弁当を抱えながら廊下をうろうろしているのを見た時だ。一成が誘うまでは、毎回毎回食事どころを探していたのだろう。
提案した瞬間の顔はなかなか忘れる事は出来ない。
この、朴訥で愛想無しの衛宮が全開で笑う場面など、どれ程の人間が見た事が有るのか。
そう、ふと思い少しばかり表情が緩んだ。
「なんだ、どうしたんだ、一成」
ずっと弁当を食べていた衛宮が顔を上げて首を傾げた。衛宮は食事時にあれこれと喋る性質ではないらしい。ただ、一成の方から何か話しかければ答えはきちんと返ってくるから、そういう性格らしい。
あの藤村大河と共に食事をしていて、騒がしい空間に慣れていない筈は無かろう。
「いや、何でも無いが…」
すぅ、と思索から意識を浮上させて視線を泳がせた。目に入ってきたのは衛宮の弁当である。本人が作っている、という話は以前聞いたが、友人であるという贔屓目を抜きにしても見事にバランスのとれた弁当だ。
冷めても美味しく食べられる様に献立が作られており、尚かつ色目が良い。更に言ってしまうのならば、肉が入っている。
柳洞寺で出る食事は、その名が示すとおり基本的に精進料理だからだ。故に肉が入っている事は無い。
暫く肉を口に入れていない様な気がする。
成長期の一成にとってはなかなか由々しき問題だ。これで充分に成長しなければどうしてくれる、と以前愚痴まがいの事をふっと零した。その時は衛宮に笑いながら「一成は俺よりでっかいじゃないか」なんて言われている。
「肉か?」
理由は幾つか有るが、突っ込んで尋ねた事は無い。というよりもいまいちその辺りを聞ける様な隙が、これでいて少ないのだ。自分よりも旧い友人だという慎二も知らない様子であるから、特に自分に対して警戒している訳ではないのだろう。
ならば、この状態が衛宮にとって常態であるというのか。
それは難儀な事ではないのか、と思いながら熱い焙じ茶の入った湯飲みを握りしめた。
生徒会室の昼休みは平和である。
ビジネスライクな人間が多く集まった今期生徒会員は、この場所を使う気がないらしい。尤も、自分が常に入り浸っているという事も有るのかもしれないが。兎に角、人が居ない生徒会室は平和で静かだ。
最初に衛宮を誘ったのは、挙動不審に弁当を抱えながら廊下をうろうろしているのを見た時だ。一成が誘うまでは、毎回毎回食事どころを探していたのだろう。
提案した瞬間の顔はなかなか忘れる事は出来ない。
この、朴訥で愛想無しの衛宮が全開で笑う場面など、どれ程の人間が見た事が有るのか。
そう、ふと思い少しばかり表情が緩んだ。
「なんだ、どうしたんだ、一成」
ずっと弁当を食べていた衛宮が顔を上げて首を傾げた。衛宮は食事時にあれこれと喋る性質ではないらしい。ただ、一成の方から何か話しかければ答えはきちんと返ってくるから、そういう性格らしい。
あの藤村大河と共に食事をしていて、騒がしい空間に慣れていない筈は無かろう。
「いや、何でも無いが…」
すぅ、と思索から意識を浮上させて視線を泳がせた。目に入ってきたのは衛宮の弁当である。本人が作っている、という話は以前聞いたが、友人であるという贔屓目を抜きにしても見事にバランスのとれた弁当だ。
冷めても美味しく食べられる様に献立が作られており、尚かつ色目が良い。更に言ってしまうのならば、肉が入っている。
柳洞寺で出る食事は、その名が示すとおり基本的に精進料理だからだ。故に肉が入っている事は無い。
暫く肉を口に入れていない様な気がする。
成長期の一成にとってはなかなか由々しき問題だ。これで充分に成長しなければどうしてくれる、と以前愚痴まがいの事をふっと零した。その時は衛宮に笑いながら「一成は俺よりでっかいじゃないか」なんて言われている。
「肉か?」