昼のメニューは
「う……そんな事はないぞ、いや、だが衛宮が施すというのならば享受するが……」
む、と眉間に皺を寄せる。熱さが抜けたのは湯飲みから手を離したから。ただ、その代わりに思考を読まれたと頬に熱が溜まっていく。
「そりゃ、じっと見られれば嫌でも気付くさ」
先程とは反対側に首を傾けた。ひょい、と箸で肉を挟み一成の目の前に持ってくる。……その、余りにもあまりな光景は、傍からどう見えるのか。など栓もない事を一瞬想像してしまい脳が瞬間沸騰でもしたような錯覚に陥った。
がたん、と椅子が悲鳴を上げる。その音は一成を我に返させる訳ではなく、余計に追い詰めた。両手を机につき、勢いよく立ち上がったかと思えば壁際まで一気に後退する。
「おい、一成!?何やってんだ」
箸を置いた士郎が駆け寄って来る。机を迂回しなければならない為に若干時間が掛かるが、そんな数秒など余裕に満たないだろう。
「なんでもないぞ、なんでもない。いいから衛宮は衛宮の食事をだな」
「はいはいはい、良いから一成も食えよ。お前が食い終わらなきゃ俺も食わないからな」 理不尽な、と緩んだ目で衛宮を軽く睨み付けても効果は上がらない。一瞬、ぐ、と息を詰まらせただけで直ぐ元の顔色に戻る。
「俺の肉全部やるからさ」
「いや、しかしそれでは衛宮の分が……」
「良いんだよ、どうせ家で食ってるし」
藤ねえとの戦争になるけどな。
そう言って薄く笑う衛宮の背中にはいっそ哀愁さえ漂っている。あの藤村女史と衛宮の夕食戦争を想像し、思わず吹き出してしまった。