いまわのきわ
「好きだよ。」
その男は、上機嫌にそう言った。
その言葉は、人間すべてに向けられているような、おもちゃやペットに向けられているような、
何気ないものだったのかもしれない。
でも、その言葉をかけられたとき、少年は、無意識に、気付くことを避けていた自分の気持ちに気付いてしまい、愕然とした。
そんなことは、いけない。
そんなことは、許されるはずがない。
その想いを認めてしまえば、自分が自分でなくなってしまう。
今までの自分の価値観が崩壊する予感に怯え、必死に目を逸らそうとした。
けれど、その想いは、気付いた瞬間から、執拗に自分を追いかけ、心を苛んだ。
儘ならない自分の気持ちに途方に暮れ、思い悩み、そして少年は----。