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いまわのきわ

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池袋の喧嘩人形に大切な人ができたらしい。

その奇跡は、臨也にとっても、面白おかしく観察できる、いいニュースのはずだった。
幸せの絶頂にいる静雄を絶望させるための、いいネタができたのだから。

だが------。

「何で帝人君なのさ…!!」
静雄と臨也の喧嘩に巻き込まれ、飛んできた看板が激突しそうだった帝人を身を呈して
庇った静雄を苛立たしげに見る。
ビルの壁に当たって跳ね返ったものだとはいえ、自分が投げたものを自分で受け止めるとは、
相変わらずそのデタラメさに呆れるしかない。

驚きから回復した帝人が気遣わしげに静雄の肩に触れ、
それに問題ない、と言う風に静雄が首を振る光景を、睨み付けるように見ていると、
帝人がこちらに気づいた。
臨也の形相に怯えるように震える肩と、青ざめた表情。

ねえ。

どうしてそんな目で僕を見るの。

帝人を安全な場所に遣って再び向かってこようとする静雄を、「興がさめたよ」と、振り切って、
新宿への道を急ぎながら、呟いた。

「面白くない、全く面白くないね…!」

自分はおかしい。
静雄に恋人ができようが、それが男であろうが、お気に入りの観察対象のダラーズ創始者であろうが、
関係ないはずだった。
いつもどおり、こんな冗談みたいな出来事に関して、
もっとも愉しく人間観察ができるように、考えを巡らせるだけだ。
なのに。
あの子供がこちらを見ないで、
いつも心配げに静雄の方ばかり見ているのが、苛立たしくて仕方がない。
こちらを見るときは、いつも、怯えたような、強張った表情であることも、気に障った。


あんまり苛々したものだから、学校帰りの帝人を待ち伏せして、
「なんであんな化け物のシズちゃんを選んだの?」
裏路地に追い詰め、問い詰めた。
帝人は相変わらず怯えたような、硬い表情で、こちらとまともに視線を合わせようともしなかった。
それに焦れて、乱暴にその顎を掴み、無理やりその唇を奪った。
そのとき帝人は、信じられない、というように大きく目を見開き、それから、激しく抵抗した。
それがますます面白くなくて、帝人の足腰が立たなくなるまで深く執拗にその呼吸を奪った。
解放され、息も絶え絶えに崩れ落ちる帝人に、追い討ちをかけるようにその耳元で囁く。
「どうせならさ、俺にしない?」
その言葉に帝人は、愕然としたように臨也を見て、けれどすぐに視線を俯かせた。
「…出来ません。」
震える声で、けれどきっぱりと拒否の意思を表すその言葉に、
臨也は一瞬、目が眩むような激しい感情に襲われ、
いっそ、目の前の少年をここで無茶苦茶に壊してしまおうか、と思ったが、ぎりぎりで踏みとどまった。
「へぇ…そんなにシズちゃんがすきなんだ?」
いつもの自分らしい、皮肉めいた口調で問いかける。
その言葉に、帝人はなぜかびくりと震え、けれど、頷いた。
「そう、じゃあ仕方がないから、俺は君とシズちゃんのうまく行く筈がないこのおままごとの
 行く末を見守らせてもらうよ。」
帝人から身を離し、おおげさな身振り手振りをしながら、愉しげに告げる。
それに帝人は、俯いたまま、何も言わず、立ち上がると、落ちていた鞄を拾って、小走りに去っていった。


作品名:いまわのきわ 作家名:てん