君がいいの。
布団をかけてやると、その手をとって臨也がふてくされたような顔をしている。帝人は言われた言葉の意味を測りかねげ、首をかしげて困ったように笑った。すると、ますます機嫌を悪くした臨也は、ぎゅうっと帝人の手を強く握る。
「ちょ、臨也さん、痛い」
「君が!」
たぶんきっと、熱で何を言っているのかよくわかっていないんだろうけれど。
それでもこんな必死な形相で、何を言うのかと思えば。
「君がいるから安心なの!君がいなきゃ意味ないの!何のために俺がこんなに頑張って、毎回君のところにきてると思うのさ!」
辛いんだよだるいんだよ頭痛いし、本当なら歩きたくないんだよ!
帝人にそんなことを叫んだあと、臨也は手をぱっとはなすと、布団を頭からかぶって丸くなる。
あっけに取られながら、帝人は叫ばれた言葉を何度か咀嚼し、意味を理解すると同時にうわあ、と一気に頬を染めた。え、うそ、どうして、なんで。疑問はいくつも頭を振るぐると回るけれど。
「臨也さん・・・?」
拗ねた子供のように布団の中で丸くなるその人は、熱のせいで普段と違うのだと、分かっているけれど。
でもあんな顔を見せられてしまったら、参った。これからも拾ってあげなきゃいけないような、気がしてくる。
「自分で叫んで、照れないでくださいよ・・・」
笑いながら帝人が言うと、布団の中からくぐもった返事が聞こえてきた。
「・・・桃のゼリー食べたい」
「はいはい、ちゃんと買ってきましたから、ね」
「・・・すきだよ」
この流れでそれをいうか。
頭が回っていないのがよくわかる素直なセリフに、だからこそ帝人は頬が緩むのを止められなかった。
「はい、知ってます」