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境目@変態EX
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まほうのうつわ

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「君は泣き虫だからこれをあげるよ」
そう言って、国を離れる弟がアーサーにくれたのは、小さなガラスの器だった。
「これは涙を受け止めてくれる魔法の器だよ。どんな涙も絶対に受け止めてくれるんだ。でも、この器が受け止められるのは一日にたった一粒だけさ」
「たった一粒」
「そうたった一粒。だから君はこれを使う時を間違っちゃいけない。いつでも受け止められるわけじゃあないんだから」
アーサーの弟はくれぐれもと付け加えて、そうして国を旅立って行った。アーサーはもうそれだけで涙ぐんでしまったけれど、ガラスの器は両手の平にぎゅっと押しつけたままにしておいた。
きっと温めた方が、ガラスの器も機嫌よくアーサーの涙を受け止めてくれるだろう。
くらいくらいベッドルームで、アーサーはガラスの器を枕もとに置いて一緒に眠った。夢に落ちる瞬間に、目尻を優しい温もりがぬぐった気がしたけれど、上質なシーツがアーサーを離さなかったのだ。
次の日、アーサーが目覚めるとガラスの器がおはようと言ったので、アーサーも寝ぼけまなこをこすりながらおはようと返した。
「昨日は暖めてくれてありがとう。お礼に君が眠る前に涙を一粒もらったよ、ねえ、まぶたが痛くないでしょう?」
ガラスの器が嬉しそうに言うので、アーサーは自分の緑の目もとをふにふにと確認する。たしかに、いつもは真っ赤に腫れて痛くなっているはずの目もとが、今日はさらさらと乾いて痛くない。
「これからも君の涙は俺が受け止めてあげる。俺は出来そこないだから、たった一粒しか受け止められないけど・・・捨てないで」
ガラスの器は最後のほうは消え入りそうな声で呟いた。きっとこのガラスの器は、アーサーと同じようにいろんな人の手を離れては出会いを繰り返してきたんだろう。
そう思うと、アーサーはこの器がまるで友達のように思えてきて、ちょっぴりうなだれたように光をなくしたガラスの器をそっと持ち上げて視線を合わせた。
「捨てたりなんかしないさ、これからはお前と俺は友達だ!友達は名前で呼ぶんだ、俺はアーサーだ、お前は?」
「ありがとうアーサー、俺はフェリシアーノだよ!」
ガラスの器はキラキラと光ってアーサーに笑いかけた。心の中でそっと礼を弟に告げて、アーサーは新しい友達におはようのキスを送ってやった。フェリシアーノはいつもアーサーの隣でほほ笑んでいる。
作品名:まほうのうつわ 作家名:境目@変態EX